西村 一樹

にしむら かずき

西村 一樹 Kazuki Nishimura

環境学部 地球環境学科 助教
k.nishimura.s7@it-hiroshima.ac.jp

体が睡眠から覚めきっていない午前の運動は、負荷が大きい

サーカディアンリズムという言葉を知っていますか。約24時間を1周期として変動する生理現象のことで、動物や植物などあらゆる生物が持っています。もちろん、人間も。わかりやすく言うと、人間の体はいつでも同じように機能するわけではなく、時間帯によって変化する、ということです。
私とゼミの学生は、同じ運動を午前に行った場合と午後に行った場合とでは、心拍数・血圧はどう変わるか、を調べました。学生が被験者となり、12分のウォーミングアップの後、全力の20%で2分、60%の力で2分、計4分の5回繰り返しで、自転車こぎをするのです。
すると特徴的な結果が得られました。60%の力でこぐ時の心拍数・血圧は、午前も午後もほぼ変わりません。しかし20%の時、心拍数・血圧とも、午前の方が低かったのです。つまり「午後に比べて午前は、心拍数・血圧の最大と最小の差が大きくなる」わけです。午前は体がまだ睡眠から完全に覚めきっていない状態なので、差が大きくなるのでしょう。そこで行動を起こすと当然、体には大きな負荷がかかります。脳梗塞や心筋梗塞など血液の流れに起因する病気が午前に起こりやすいのも、こうした生理現象による、と言えます。

学生たちが協力し、午前と午後で同じ運動を行った場合の、心拍数・血圧の数値の変化を測定。

朝食をとったら、散歩したら、入浴したら、生理指標はどう変わる?

どうすれば危険を回避できるのか? 一つの可能性として、朝食を規則的にとるということが考えられます。上記の実験で、朝食をとった場合ととらなかった場合の比較も行ったのですが、朝食をとると午後の応答に表れる、とわかりました。体をより早く目覚めさせることができるのです。今後、「朝、散歩をした場合としなかった場合」の比較もしてみたいと思っています。恐らく、散歩をした場合の方が、最大と最小の差は小さくなるのではないでしょうか。
このように私は、人間の生理指標の変化について研究しています。現在は午前と午後に分け、どんな差があるかといった観点で研究を進めています。自転車こぎを行う場合でも、例えば入浴したらどうなるだろう?とか、いろいろ条件を変え、学生と共に調べるんです。また、寝た状態から体を起こす、という起立性反射において、午前と午後でどんな差があるか、といった研究も進行中。起立性反射については、運動習慣のある人とない人との比較や、水泳プールでやってみるとどうか、といった具合に展開していきたいと考えています。

ガムをかむサッカー選手のパフォーマンスは高くなる?

ゼミの学生は、自分の興味のある分野での様々な生理応答について研究を進めています。例えばある学生は、「サッカーの試合中、ガムをかむ場合とかまない場合の生理応答の差」に取り組んでいます。登山に興味を持つ学生は、登山時における生理現象を調べようとしています。また、血液の流れを良くし、乳酸値を抑える効果がある『スキンズ』の効果を追究する学生もいて、多種多彩ですね。
ウチのゼミの方針は、分析や評価だけでなく、実験も測定も全て学生同士が協力する、ということ。どれだけ文献を読んでも、実験は自分でやってみなければわかりません。やってみると、教科書通りではない様々な発見があります。それを自分の眼と耳と体で体感することが大切なんです。
ちなみに私は以前、「水中環境と、身体機能の回復・健康づくりとの関連性」という研究に携わっていました。その一つとして、知的障がい者の水中運動指導を通じ、社会復帰のきっかけづくりにする、という実践研究も継続しています。そういう方面に興味がある学生の研究もサポートできます。自分の発想を活かし、思い切って研究に取り組んでほしいですね。

ゼミ取材 こぼれ話
高校時代、野球部に所属。朝練習・昼休み練習・放課後練習と練習漬けの毎日だった西村先生。くたくたの体をより早く回復させるにはどうすれば良いか?と興味をもったことが、今の研究につながっている、と先生は言います。「水中でならより早く回復するのではないか?と思い、水中回復に関するテーマに取り組み、それが生理現象の変化全般をとらえる研究へと広がりました」。そんな先生は今、広島工業大学・硬式野球部のコーチも務めています。「選手たちは休憩時にカップラーメンを食べたりしている。ダメとは言わないが、スポーツ選手なら生理現象に与える影響などにも気を配ってほしいな、とヤキモキします」と笑う西村先生。先生の指導があれば、健康管理もしっかりできるアスリートになれるかも。