おがわ ひでくに
小川 英邦 Hidekuni Ogawa
生命学部 生体医工学科
准教授
出身:広島県 (広島県立広島皆実高等学校)
ogawa@cc.it-hiroshima.ac.jp
研究室・ゼミのホームページ
患者に輸液を投与する方法はいろいろあるのですが、日本の病院では自然落下式が主流です。一滴ずつポタポタと落とし、少しずつ患者の体に送り込む、というやり方ですね。あの「一滴ずつ」という落ち方には、ちゃんと意味があります。輸液の種類によっては、あまりにも早く患者の体に入ってしまうと、患者にかえってダメージを与えるものもあります。そうならないように、輸液の入るスピードをコントロールしているわけです。
自然落下式の場合、輸液が予定通りの安定的な速度で落ちているか、輸液がなくなっていないかといったことは、看護師が自分の目で確認するしかありません。もちろん、医師や看護師は点滴で問題が発生しないよう、細心の注意を払った管理を行っています。とは言え、他にも多くの患者を担当する看護師が、自然落下の輸液を100%完全に管理するのは難しいのもまた事実です。
ならば、輸液の落下を看護師に代わって監視するシステムがあればいいのではないか、と考えました。輸液の落下部に手のひらサイズの小さなセンサを組み込み、輸液の状態を自律的に検知するのです。
輸液の落下部では、まず小さな粒ができ、それが徐々に膨らみ、大きな一滴となってチューブに落ちていく、という現象が繰り返されます。また輸液は電気を通します。そこに着目し、落下部の周囲に電極を配置することにしました。
粒が小さく、周囲の電極から離れている時は、電圧も小さいまま。ですが粒が大きくなり、電極に近づくに従って電圧が大きくなります。落下するといったん小さい状態にリセットされ、次の粒が大きくなるに従いまた電圧が大きくなっていきます。これをモニタしグラフにすると、ノコギリの刃のような波形が表れます。
つまり波形で輸液の落下を確認できるのです。波形の間隔が狭いと、輸液の落下速度が早くなっていることを示します。グラフが完全にゼロになり、ノコギリ状の波形が表れなくなったら、その時の電圧で輸液がなくなったか、輸液が中断していることを意味します。
抗ガン剤など、患者の体に送る速度を厳密に管理しないといけない輸液の場合、自然落下式でなく輸液ポンプを用いる場合もあります。ただ、輸液ポンプは圧力がかかるため、血管の弱った高齢の患者には使いにくいのです。しかし、この輸液監視システムなら、自然落下式で厳密な管理が可能となります。
この輸液監視システムは、私一人の力で開発に成功したわけではありません。同じ学科に所属する様々な領域の先生や学生に協力を仰ぎ、形にしていったものです。領域の異なる者同士で協働したからこそ、いろんなアイデアが出てきて、システムをより向上させることができたのです。
この学科には互いの知識を集めて目的達成を図る、という風土があります。学生のゼミ室を先生ごとに隔てていないのも、異なる分野の学生・先生同士がすぐ協力体制をとれるように、との配慮から。ゼミの学生にはこうした環境を活かし、運動系を専門とする先生や学生に協力してもらい、効果的なトレーニングを支援するシステムを開発したり、運動系のゼミの学生が、私たちの分野と協力して、反復横跳びの回数を自動カウントするシステムを開発したりしています。
私のゼミをはじめ、この学科には特許を取得できるような研究・開発テーマがごろごろ転がっています。実際、年に2~3本は特許申請しています。学生の研究が特許取得や最先端医療機器の開発に結びつくことも珍しくありません。ここには、とてもやりがいのある研究テーマが多くあります。
ゼミ取材 こぼれ話
上記とは別に、高齢者向けの各種システム開発も行っている小川先生。最近手がけたものの一つに、高齢者向けの災害時避難誘導システムがあります。「何かの災害に見舞われ、避難しないといけなくなった場合、高齢者の中には人工呼吸器が必要な人もいます。こういう高齢者には、停電を想定し、自家発電設備の整った場所へ避難誘導しないといけません。同様に、人工透析を行っている人は、透析に必要な水を確保するため、浄水設備のある場所へ誘導する必要があります。また車椅子の方の場合は階段のない避難所へ誘導する、など、高齢者の状況に合った避難誘導システムを作ろう、と」。他にも一人暮らしの高齢者の安全を見守るシステムの開発など、先生の研究はいずれも社会的ニーズの高いものばかりです。