長崎 浩爾

ながさき こうじ

長崎 浩爾 Koji Nagasaki

生命学部 食品生命科学科 准教授
出身:富山県高岡市(富山県立高岡南高等学校)
k.nagasaki.8h@it-hiroshima.ac.jp

「運動のおかげで人生が変わった」という喜びの声

私はもともと体育科の教員としての勉強をしていました。大学院に進学して関わったテーマの一つに、高齢の女性に多い変形性膝関節症について、というものがありました。この時、工学の一分野である「バイオメカニクス」からアプローチしてみたことから、工学系や医学系の研究者と知り合う機会も増えたんです。そして、もっと多くの人に成果を還元できる研究に取り組みたいと思い、一般の人々の健康維持に役立つ運動とは何か?を中心に据えるようになりました。
大学を出た後、地域の健康づくりセンターに勤め、多くの一般の方々と関わるようになりました。生活習慣病などを予防、改善して健康を維持し続けるには、どんな運動が必要か。人々との実践を通しながら、研究を重ねました。
そこでトレーニングしてもらった人の中には、約1年間で体脂肪量20kg減、ウエスト20cm減に成功した男性もいます。トレーニングと言っても無茶な内容ではなく、その人に合った強さと量の運動をやってもらいます。一人ひとりの体に合わせて運動メニューをつくりますので高齢者にもできるものです。「運動のおかげで毎日が快適になった」「人生が変わった」「ありがとう!」という声を聞いた時は、泣きそうになるほど嬉しかったですね。

地域住民の方々を対象に、「健康づくり教室」を実施

広島工業大学にやってきたのは2010年の4月。ここでも地域の人々と一緒に実践していこうと、健康づくり教室を始めることにしました。期間は3カ月。週1回、大学の体育館に来てもらい、2時間程度の運動をこなすんです。募集してみると、50代以上の方を中心に、定員30名がすぐにいっぱいになりました。やはりみなさん、関心が高いのですね。
健康づくり教室では、まずウォーキングで体を温めた後、3グループに分かれ3種類の運動を行います。1つはチューブを使って脚力などの筋力アップを図るもの。1つはバランスディスクを使い、バランス感覚を養うもの。もう1つがバランスボールを使う運動。一人ひとりに脈拍計を装着してもらい、現在の体力に合った運動をこなしてもらうのです。
メニューは、学生が主体的に考えます。教室の進行を担当するのも学生。私はそばで見守り、アドバイスを送るだけ。毎回、運動を始める前に、参加者には体重や血圧を測ってもらっています。3カ月のメニューをこなした後、事前に行った体力測定の数値がどう変わっていくのか。参加者たちの健康維持にどんな貢献ができたか。学生たちにはしっかり分析してもらい、次につなげるつもりです。

60代の女性でも、30kgのバーベルを担いでスクワットができる

以前勤めていたセンターでは、バーベルを使った筋力トレーニングも取り入れていました。最初は何も持たずに立ったり座ったりのスクワット。その次は両手にダンベルを持って。そこから徐々に運動の負荷を増やしていくのです。すると60代の女性でも、3カ月で、30kgバーベルを担いでスクワットができるようになります。1セット10回を3セット、というメニューを笑顔でこなすんです。正直、そこまでできるのか、と私の方が驚いたくらい。筋力トレーニングを含めた運動の効果はてきめんで、3カ月で体重5.3kg減、ウエスト11.5cm減を達成した女性もいらっしゃいます。
筋力トレーニングなどで鍛えた筋肉は、体内の糖分をよく代謝します。するとインスリンが効きやすくなり、脂肪が燃えやすくなる。だからダイエットにも効果があるのではないか? 筋力アップの運動により、代謝が変わる。それが生活習慣病の改善に不可欠なのではないか...と予測しています。
広島工業大での健康づくり教室は、まだスタートしたばかり。地域の方々との触れ合いを通してデータの分析を重ね、人々の健康維持に役立つ手法を確立していきたいと思います。

ゼミ取材 こぼれ話
運動での健康づくりなら医師とも対等な立場で話せるくらいの、健康維持スペシャリストを育てたい、というのが、長崎先生の願い。「医療機関は疾患の治療とリハビリを行う。でもおそらくこれから先はそれだけでは足りません。生活習慣病の改善や、高齢者が日常生活をスムーズにこなせるよう体力を維持するため運動施設が必要。そこで活躍できる人を育てたいのです。受け持った方々の疾患の改善について、時には医師ともきちんとコミュニケーションできるような、スペシャリストを」と語る先生。そのため先生自身が、メディカル分野に関する知識の習得にも積極的。そうやって得た知識を、学生たちにどんどん還元しています。