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電気システム工学科

川原 耕治

教員紹介

川原 耕治KAWAHARA Koji

工学部 電気システム工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○電力システムの計画・運用に関する自動化支援
【担当科目】
基礎電気回路II 、 電力伝送工学 、 電力システム工学 、 電気システム実験D 、 電気ものづくり基礎実習 、 社会実践基礎 、 電気基礎実験A(PBL) 、 基礎電気回路演習
【研究テーマ】
1.電力設備停止計画に関する研究 電力システムは莫大な数の設備で構成されており、その設備の更新やメンテナンスは電力の安定供給の観点から必要不可欠です。本研究では「現場で役立つ」という視点から対象となる系統の複雑さを維持した計画立案手法の開発に取り組んでいます。
2.配電系統信頼性評価に関する研究 配電系統の信頼性評価のための回路モデルの検討と、分散電源に対応した保護装置を組み込んだ系統における評価手法の開発を行います。
3.教育を目的とした電力系統解析支援に関する研究 電力系統は同期機や変圧器など多数の機器が有機的に結合し、巨大なシステムを構築しています。大学ではそれぞれの性能や特性について学びますが、システムとしての挙動は理解し難く、複雑です。そこでこれらの現象をシミュレーションし、視覚的に表現することで手助けする研究を行います。
【ひとこと】

自分で考え、何らかの答えを出す力を身に付けてください。

研究紹介

川原 耕治KAWAHARA Koji

工学部 電気システム工学科 教授

停まってもらっちゃ困る電⼒設備の点検は、
どうやればうまく⾏く?
PROLOGUE

急な停電は本当に⼤変。TVも映らなくなるし、ケータイも充電できないし、⽇常のあらゆることに障害が出てしまいます。電気のトラブルを防ぐには、やっぱり⽇頃からの点検・修理が⼤事です。では、点検のためいったん設備をストップさせて…って、それじゃあ電気が停まってしまい、生活や産業に大きな影響を及ぼしてしまいます。
停まっては困るし、設備を停めないと、点検・修理はできないし。どうすればいいのでしょうか?この問題の最適な解決策を、川原先⽣は研究しています。

300万通りの点検⼿段から、“最適”を選び出す。

電⼒の供給については、海外と⽇本では考え⽅に⼤きな隔たりがあります。海外では、できるだけコストがかからない、つまりメンテナンスも少なくするのが良いとされます。⽇本では、コストも重要ですが、それよりも安定供給の⽅が強く求められます。そのために、⽇本の電⼒会社は設備やシステムのメンテナンスに、⼤きな⼒を注いでいるのです。
しかし、電⼒のメンテナンスは⼤変に複雑です。ある設備をメンテナンスのために停めるには、他の設備にどうやって肩代わりさせるのか。電⼒を供給している現在の送電システムを一時的にストップさせるのには、他のシステムをどう使えばいいのか。実は、岡山県だけのメンテナンスを考えた場合でも、机上のシミュレーションでは何兆通り、実現可能なやり⽅に絞っても300万通りのやり⽅が考えられるのです。
これまでの電⼒メンテナンスは、現場技術者の経験と勘に頼って⾏われていました。そこで私は、最適なメンテナンス⽅法を、コンピュータによって⾃動的に判断する研究を⾏っています。
現場で使われることを想定しているので、ローテクで、柔軟性があり、実際の技術者の経験や勘にも沿うものを目指しています。あと少しで、実⽤化されるところまで来ています。

太陽光発電や燃料電池といった多様な発電方式も取り入れながら、安定的で公平な電力供給を行うシステムを追究します。

“スマートグリッド”の実現にも貢献する

私の研究室では、「⾼柔軟性⾼信頼度電⼒エネルギー輸送評価装置」を開発しました。これは電⼒回路の中で、瞬間的にどういうことが起こっているか検査し、評価するものです。電⼒設備のメンテナンスを⾏う際に使いますが、他にも様々な⽤途が考えられるようになりました。というのも、電⼒も「より良く制御する」ことが必要な時代になってきたからです。
最近、スマートグリッドという⾔葉を聞くようになったのではないでしょうか。これは、例えばAIやスマートセンサなどを利⽤し、必要なところに必要なだけ電⼒を送るシステムなどのこと。つまり、電⼒を需要側と供給側の両⽅から制御して、最適な送電を実現するのです。
再生可能エネルギー発電には、自然の状況で発電量が左右されるという短所があります。しかし、過去のデータや天候予測などを加味して発電量や需要量をとらえ、電⼒会社からの電⼒と組み合わせて最適に制御できれば、⼤変有効な供給源となります。

太陽光や燃料電池などあらゆる「発電」を視野に。

さらに、システムの中に燃料電池を取り⼊れることも考えれば、電⼒のさらなる有効利⽤が可能になるでしょう。
燃料電池は、⽔素と酸素を結合させて、電気を発⽣させるものです。通常は⽔素ボンベを購⼊・使⽤しますが、私たちは昼に太陽光発電で余った電⼒を⽤いて⽔素発⽣器を動かすことを考えています。そこで⽣まれた⽔素を使い、夜には燃料電池で発電する。こうすれば、化石燃料へ過度に依存することなく、電力を効率的に発生させられます。
このように、太陽光発電に燃料電池を加えて電⼒を得る場合に、最適で安価な⽅法を考え出すことも、現在のゼミの研究テーマになっています。
電力というエネルギーを、全ての人々が分け隔てなく、安定的に利用できるようにすることは、豊かな暮らしや持続的な発展を実現するための基盤となります。そうした基盤づくりのため、研究の成果を活かしていこうと考えています。