内藤 望

ないとう のぞむ

内藤 望 Nozomu Naito

環境学部 地球環境学科 教授
出身:京都府京都市
naito@cc.it-hiroshima.ac.jp
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温暖化で北極の氷が融ける? いやその前に、山岳氷河が危ない!

地球温暖化によって、北極で暮らすホッキョクグマの生息地がどんどん減ってきている...なんて報道を聞くと、「何とかしなきゃ!」って気になる。実はこの温暖化、地球上の様々な環境に影響を及ぼしているのです。内藤先生が注目する『山岳氷河』もその一つ。世界の高山地帯にあり、長い年月をかけて大きくなった山岳氷河が今、急速に縮小しているとのこと。それにより、洪水や水資源などの問題が起こっています。それらの問題解決に向けた第一歩は、氷河のメカニズム解明です。

ヒマラヤやアンデスで現地調査を重ねる

テレビなどで、巨大な氷山が崩れ落ちる映像とともに、世界の主要都市が水没する危険にさらされている...というような報道が行われています。しかし科学的に見れば、20世紀の100年間で世界の海面が上昇した高さは、17センチ程度です。21世紀中には50センチ程度上昇すると予想されています。世界の海面が数メートルも上昇する、という話は、少なくとも数百年以上の時間がかかる話なのです。
地球温暖化で氷河が融け出して都市が水没する、という単純過ぎる話には、多くの仮定や誇張が含まれていることが多いので、注意が必要です。ただし、氷河の縮小が、海面上昇以外にも、洪水災害を始めとするさまざまな影響を地域にひき起こしかねないのは事実です。
そうした問題を解決するには、各地の氷河がどのように形成され、どう縮小しているのか、メカニズムを解明しなければなりません。
私は、ヒマラヤ山脈やアンデス山脈の氷河の現地調査を重ね、温暖化に伴う氷河縮小の実態はどの程度なのかを調べ、さらに将来像を予測するために必要な情報を集めてきました。また、ヒマラヤでは、氷河が縮小することで引き起こす可能性のある洪水災害について、その危険度を客観的に評価し、現地住民の対策に活かしてもらう研究も手がけてきています。

地面と大気の「熱バランス」は保たれているか?

大学では、1年生2年生のうちは、「気象学」や「雪氷(せっぴょう)学」の基本を学びます。気象学では、天候だけでなく、地球環境や大気の仕組みを理解することが大切です。雪氷学は名前通り雪や氷を対象としており、氷河もその1つ。
3年生になると、地表面の「熱収支」を観測する、体験的な実習に移ります。熱収支とは、地表面と大気との間における熱エネルギーのやりとりのこと。身近な例では、打ち水があります。打ち水をすると、水が地面から蒸発する時に熱を奪うため、周囲の温度が下がります。このように、地表面近くの温度環境は熱収支によって決まっているので、温暖化対策を考える上でも、熱収支をしっかり理解しておくことは重要なのです。
そして私のゼミに入ってくる3年生は、「熱収支」や私の著した「氷河」に関する解説論文を輪読し、問題点を論じ合います。そうした中で、次年度に取り組む卒業研究のテーマを見つけ出すわけです。

いろんな角度から物事を判断し、行動できる人間に

校舎の屋上には、気温や風速などを観測し、自動的にデータを蓄積できるシステムが設置してあります。4年生は、このシステムの活用も含めて、自ら気象や熱収支を観測したり、気象庁の過去のデータを解析するなどの方法で、卒業研究を進めています。
最近の卒業研究のテーマは、「広島市におけるヒートアイランド強度に関する観測研究」「最近48年間の西日本における大雨発生確率の変化傾向に関する研究」「人工衛星画像を利用したヒマラヤ山脈における氷河湖の面積拡大に関する研究」「日だまり効果の地表面熱収支への影響に関する観測研究」などです。
大学での4年間を通して、「科学的な知識を持ち、いろいろな角度から客観的に物事を判断したうえで、的確な行動を起こせる人間」になって欲しいと思います。