広島工業大学

  1. 大学紹介
  2. 学部・大学院
  3. キャンパスライフ
  4. 就職・資格
  5. イベント情報
  6. SNS一覧
  7. 施設紹介
  8. 2024年度以前入学生の学部・学科はこちら→

広島工業大学

2019年度 前期末卒業証書・学位記授与式式辞

式辞

本日9月13日は、新しい元号「令和」になって初めての中秋の名月。古来、自然との対話を大切にしてきた私たちにとって、特別な日であるこの佳き日に、保護者の皆様のご臨席を賜り、令和元年度 広島工業大学 前期末 卒業証書・学位記授与式を、厳粛に挙行できますことは本学の光栄とするところであり、皆様方に本学の教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。

本日、ここに集われた卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんのこれまでの努力や研さんに対し、深く敬意を表しますとともに、心よりお喜びを申し上げます。

また、保護者の皆様、高いところから失礼いたしますが、ご子女のご卒業、誠におめでとうございます。ご子女の本日の晴れ姿をご覧になられて、大変お喜びになっておられるものと拝察し、心からお祝いを申し上げます。また、平素より本学の教育、運営に深いご理解とご支援を賜りましたこと、心から感謝を申し上げます。

さて、卒業生の皆さん、皆さんはどのような学生生活を送ってきたでしょうか。振り返ってみますと、不安と期待が入り交じった複雑な気持ちで臨んだ入学宣誓式に始まり、これから一緒に学ぶ同じ学科の人たちと初めて共に行動したオリゼミ、そして、高校生との違いに驚きや戸惑いを感じた大学の授業、ゼミ活動や卒業研究。さらに、専門的な勉強をする傍らに取り組んだサークル活動やボランティア活動などに至るまで、自らの興味に従い、実に多くの経験をしてきたことと思います。

それらの経験の一つ一つを思い出してみると、常に誰かと一緒だったのではないでしょうか。同じ学科の友達、先輩や後輩、サークルの仲間、またある時は、チューターやゼミの先生だったかもしれません。困った時も、悲しかった時も、うれしかった時も、いつも誰かが一緒に居たのではないかと思います。

皆さんは大学生時代に多くの人に出会い、何かに一緒に取り組むことで、苦楽を共にできる仲間をつくってきたのではないでしょうか。しかし、時間をかけてつくってきたつながりも、一旦途切れてしまうと、元のとおりに戻すのは簡単ではありません。皆さんには是非、大学生時代につくり上げたつながり、仲間を、これからも大切にし、長い人生を歩んでほしいと思います。

ところで、皆さんは、これからの社会について考えたことがあるでしょうか。

今後、社会のグローバル化や情報化はこれまで以上に進み、国と国との垣根が無くなるボーダーレス社会になると言われています。あるところで生まれた情報は、複雑に絡み合ったネットワークを非常に速いスピードで行き交い、あっという間に世界中に行き渡ってしまう、そんな社会になりつつあります。現在は、歴史というこれまでの経験を基に、物事の理解や判断をしていますが、これからは、これまでの経験が役立たない時代がやってくると考えられます。

2015年、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が、AIやロボット技術の発展により、今後、現在の仕事の半数近くが、人間が従事する仕事ではなくなるとの予測を発表して、多くの人たちが衝撃を受けました。

私たちは、そのような社会で、何に気をつけて生きていかなければならないでしょうか。

一冊の本を紹介したいと思います。

少し前に話題になった本ですが、スウェーデン出身の医師で公衆衛生学者のハンス・ロスリング氏の書いた「ファクトフルネス」という本です。この本は、アメリカ合衆国のオバマ元大統領も「思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進める。そんな希望を抱かせてくれる本」と評して絶賛したほどの本です。

この本の最初に、13の質問があります。1つだけ紹介しましょう。「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらい居るでしょうか?」という質問があります。解答の選択肢は3つ「A. 20%」「B. 50%」「C. 80%」です。私たちは、これまでの知識から、世界規模で考えると、貧富の差はますます広がり、貧困は増え続ける一方であると考えてしまいがちです。このことから、Aの20%が正解と考えた人もいるでしょう。また、20%は少し少なすぎるのでBの50%かもしれないと考えた人もいるかもしれません。

この問題の正解はC. 80%です。正解率は平均で13%だったそうです。

答えを考えるときに、恐らく、これまでの多くの知識や経験を総動員して考えると思います。しかし、その知識や経験が鮮明であればあるほど、その裏付けとなる情報を精査せず、答えを導き出そうとしてしまいます。これでは間違った判断をしてしまうのは明らかです。

このことからわかることは、物事を捉える時には、先入観を捨て、データに基づく理解や判断をしなければならないということです。これからの社会で必要なことは、私たちの身の周りにあふれかえるデータや情報をいかに活用していくか、ということではないかと考えています。

この本の著者のハンス・ロスリング氏のプレゼンテーションがTED Talkで公開されています。TEDはTechnology Entertainment Designの略で、「広める価値のあるアイデア」を世の中に発信しているニューヨークに本部のある団体のことです。その団体がインターネットを使って、様々な人のアイデアを動画で配信しているのですが、それがTED Talkです。ハンス・ロスリング氏の他にも、いろいろな人のアイデアが配信されていますので、ぜひ、時間があるときに観てみるとよいでしょう。

私たちは、本学の教育理念である建学の精神『教育は愛なり』、教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』を教育の根幹とし、倫理観ある技術者を育成すべく、皆さんを指導してきました。そして、皆さんはその指導に応え、本当によく頑張ったと思います。

今後、皆さんの進む道はそれぞれ異なりますが、本学で身に付けた知識や技術を十分に活かし、地域、日本、さらには、世界で活躍されることを期待して、私の卒業に際しての式辞といたします。

令和元年9月13日
広島工業大学 学長  長坂 康史