色鮮やかな草木が街を彩り、満開の桜も皆さんの新しい門出を祝うかのようです。本日、ここ広島工業大学に期待に胸を膨らませて、入学して来られた新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆様、ご子女のご入学、誠におめでとうございます。広島工業大学を代表して、心よりお慶びを申し上げます。

この二年間、私たちは新型コロナウイルスという未知のウイルスと戦い、そして、共存する方法を模索してきました。このウイルスは、経済活動に大きな打撃を与えるとともに、一人ひとりの暮らしにまで大きな変化を強いることになりました。皆さんも、日々不安に感じながら、制約のある環境の中で、自分の未来を切り開くため、懸命に努力されてきたのではないかと思います。そして、今日、その努力が実り、広島工業大学の学生となりました。皆さん一人ひとりが夢を実現できるよう、教職員一同、全力で支援していきます。一緒に頑張っていきましょう。

広島工業大学の学生となった皆さんに、まず初めに知ってほしいことがあります。それは、広島工業大学の教育理念である、建学の精神『教育は愛なり』と教育方針『常に神と共に歩み社会に奉仕する』です。

『教育は愛なり』という言葉は、「愛」すなわち「想い」を持って教育にあたるということを表しています。私たち教職員は、皆さん一人ひとりにしっかりと向き合い、どのような支援ができるかを真剣に考える、そのような「想い」を常に持ち、皆さんの可能性を信じて、教育にあたっています。

また、『常に神と共に歩み社会に奉仕する』という言葉には、高い倫理観を持ち、何事にも感謝をしながら、真面目に努力し、社会に奉仕する人間になってもらいたいという願いが込められています。私たちは、皆さんがそのような技術系人材となり、社会に巣立っていくよう支援していきます。

さて、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく変化した社会を力強く生きていくためには、これまで誰も経験したことがない課題を仲間とともに解決する力が必要です。広島工業大学では、皆さんがその力を身に付けられるよう、「専門力」、「人間力」、そして、「社会実践力」の三つの力を柱に、さまざまな取り組みを行なっています。

三つの力の一つ目の「専門力」とは、皆さんが所属する学科や専攻で学ぶ専門的な知識や技術のことで、未知の課題を解決する上で基礎となる力のことです。もちろん専門分野については時間をかけて深く学んでほしいですが、世の中の課題は一つの分野の知識や技術だけで解決できるとは限りません。そのため、自分の専門以外のものごとにも興味を持ち、知識の幅を広げることにも時間を費やすと良いでしょう。

二つ目の「人間力」とは、「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義されている力です。皆さんが社会で活躍するために必要な力のことです。この力は、専門力とは異なり、教科書で勉強すれば身に付くようなものではなく、例えば、クラブ・サークル活動やボランティア活動など、実際に多くの仲間と、活動することで得られるものです。ぜひ、カリキュラム以外でも興味があることを見つけ、積極的に挑戦してください。

三つ目の「社会実践力」とは、「未知の社会課題を自ら発見し、仲間とともに解決する力」です。少し前まで、予測が難しい時代がやってくると言われていましたが、新型コロナ禍の影響を受け、圧倒的な速さで時代の変化が起きていることは間違いありません。そんな日々変わりゆく社会は、これまで考え付かなかったような、あるいは、これまで気付かれなかったような問題で溢れています。先の見えない社会に対し、問題を自ら発見し、それをさまざまな価値観を持つ人々とともに解決する力は、これからの時代を力強く生き抜くために必須です。この力も教科書から学べるものではありません。実際に社会と関わる中で発見した課題を、他者と協力して、解決に導くプロセスを経験する中で身に付くものです。皆さんには、できるだけ社会と接する機会を多く持ち、専門分野と社会との関係を意識しながら、社会課題に向き合って、力を付けてほしいと願っています。

これから大学で学びを始めようとしている皆さんは、今、新しいことに対するワクワクした気持ちとともに、大学の勉強について行くことができるか、友達はできるかなど不安な気持ちもあるのではないかと思います。これらの不安を解消するには、行動することが一番です。広島工業大学で身に付けることができる「専門力」「人間力」「社会実践力」を手にして、社会で活躍できる人になるために、学生時代は、失敗を恐れず何事にも挑戦すること、そして、皆さん自身が持っている壁を破り、一歩ずつでも良いので前に進むことを心がけてください。

現在、新型コロナ禍の影響もあり、多くのことが今までどおりにはいかず、社会全体の均衡が崩れ、不安定になってきていると感じます。ウクライナ情勢に代表されるように、世界全体に自己中心主義が拡がり、世界中が一つになって取り組まなければならないような問題でも、他者の意見を聞くこともなく、支配という一方的な手段をとる事態が散見されます。広島工業大学に入学された皆さんは、国際平和文化都市である広島で学ぶ意義を感じ、多くの異なる文化に触れ、その文化を理解しながらお互いを尊重し、ともに生きることの大切さも学んでください。

最後に、私たちは、皆さんが専門的な知識や技術をしっかりと学んで「専門力」を身に付けるとともに、自立した人間として社会で力強く生きていくための総合的な力である「人間力」、そして、先行きの見えない未来を他者と協働して切り拓く力である「社会実践力」を身に付け、高い倫理観を持ったこれからの社会を担う技術系人材として活躍できる人になることを楽しみにしています。

皆さんが、健康に十分注意しながら、充実した学生生活を送られることを祈念して、私の式辞といたします。

令和4年4月2日
広島工業大学　学長　　長坂康史