環境土木工学科
岡崎 泰幸
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○トンネル工学
○岩盤工学
- 【担当科目】
- 土木基礎工学 、 地盤工学Ⅰ/Ⅱ 、 都市総合工学A 、 地盤基礎工学 、 建設工学実験 など
- 【研究テーマ】
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1.トンネル・坑道の設計の高度化に関する研究
2.トンネル施工時の安全性の向上等に関する研究
3.トンネル・地下遺跡の維持管理に関する研究
- 【ひとこと】
「現状維持は後退」という言葉があります。1年前の自分より少しでも成長できるように、自ら目標を設定して日々取り組んでいってください。貴重な学生生活をぜひ有意義なものに。
研究紹介
岡崎 泰幸OKAZAKI Yasuyuki
工学部 環境土木工学科 講師
トンネルを安全につくり長く使い続けられるようにするためには、
解析的な評価や技術の継承が欠かせない
PROLOGUE
自動車や新幹線などで移動する際に、必ずと言っていいほど通過するのがトンネルです。山地が多く平野が少ない日本において都市部と地方をつなぐ交通網を整備するには、トンネルが欠かせません。また、都市部の地下では、地下鉄のトンネルが数多く整備されており、トンネルは人々の移動を支える重要な存在になっています。日本全体で約1万本以上、広島県だけでも300本以上あるとされるトンネル。このようなトンネルを安全につくり、長く使い続けられるようにするために、工学的な研究を続けているのが岡崎先生です。
トンネル掘削時の地盤の挙動を解析
当たり前の話ですが、トンネルは地中を掘ってつくります。そのため、工事の前には地盤調査が実施され、そのデータを基にトンネルの設計が行われます。しかし、トンネルは細長い線状構造物であるため、経済的な観点からトンネル全長にわたって調査を密に実施することは難しいといった課題があります。また、地盤は天然の材料であるため、均質な材料ではありません。そのため、実際の工事の際には、予測より硬い地盤もしくは軟らかい地盤が現れることが珍しくなく、これによってトンネル掘削時のトンネルの安定性が損なわれる場合があります。このような状況の中でより安全にトンネルをつくるには、トンネル掘削時の地盤の挙動を事前に数多くシミュレーションし、トンネルの安定性を評価しておく必要があります。
NATM工法によるトンネル掘削時の最先端部のリスクを評価
いままで説明したトンネル掘削の方法にはいくつか種類がありますが、私が主に専門としているのはNATM(ナトム)工法です。この工法は1960年代にオーストリアで誕生した工法で、現在の日本でつくられている約6割のトンネルがこの工法でつくられています(2023.12.1現在)。NATM工法では、ダイナマイトや機械を使って地盤の掘削を約1mずつ行い、掘削した壁面にコンクリートを吹付けたり、鋼製の支保部材を設置したりするなどしてトンネルの安定性を確保します。
NATM工法で最も注意する必要があるのが、掘削時のトンネル最先端部の安定性です。最先端部の安定性が損なわれて地盤が崩れると、周辺で作業する施工者を危険にさらしたり、周辺環境に大きな影響を及ぼしたりする可能性があります。そこで、私は、地盤の不均質性を考慮したトンネル掘削シミュレーションを行い、地盤が不均質であることによって生じる最先端部の崩壊リスクを評価する研究をしています。また、ダイナマイトによる掘削後に現れる最先端部の凹凸を考慮したトンネル掘削シミュレーションを行い、最先端部の凹凸が岩石等の落下リスクにもたらす影響を評価する研究なども行っています。
トンネル施工・供用時の安全・安心のためにVRやAIを活用
トンネルを安全につくり長く使い続けられるようにするためには、トンネル技術の継承が必要不可欠です。しかしながら、近年、建設業界(すなわち,トンネル業界)では、就業者の高齢化と若手人材の減少が進行し、技術継承が大きな課題となっています。そこで、私は、VR(Virtual Reality)技術を用いて、NATM工法でつくられているトンネルの施工状況が疑似体験できるシステムの構築を試みています。このようなシステムをつくり様々な現場のデータを蓄積することにより、若手技術者を対象とした教育訓練を充実させることができ、同時に技術の継承もできるようになると考えています。
また、近年、日本の道路トンネルの多くが高度経済成長期(1955~1973年)に集中的に整備されたものであることから、それらの今後の維持管理が大きな課題となっています。現在、日本では5年に1度道路トンネルの定期点検を実施することが定められています。しかし、予算や技術者が不足している地方の自治体等にとっては、この点検が大きな負担となっており、点検の省力化が求められています。そのため、AIを活用してトンネル点検の省力化を図る研究も少しずつ進めています。