広島工業大学

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広島工業大学

電子情報工学科

江田 英雄

教員紹介

江田 英雄Eda Hideo

工学部 電子情報工学科 教授

研究紹介

プロフィール

【専門分野】
○Medical Optics
○脳研究
○計測分野(光や電磁気を用いて、主に生体を対象として)
○知的財産戦略と標準化戦略
○事業化戦略
【担当科目】
画像とマルチメディア 、 アーキテクチャとOS 、 数理統計学B 、 プログラミングB 、 電気化学
【研究テーマ】
1.近赤外光を用いた脳活動計測
2.濁った系での光散乱理論、その逆問題解析
3.意識、視覚情報
4.音楽と脳活動
5.カフレス血圧計測
6.国際標準化
7.電気電子回路とソフトウエア視点からの新製品開発
8.新商品開発、規制対応
9.デザイン、QFD
10.ビジネスプロデュース
【ひとこと】

技術は社会に普及してはじめて意味を持ちます。そのために2点。新しい知見にもとづく技術を創り出すこと、その技術を利用した製品を商品レベルまでもっていって世に出すこと、が大切です。第一の点には、光を使った計測技術、脳研究などの分野で基礎研究から応用研究まで新しい研究を進めます。第二の点には、知的財産戦略、国際標準化戦略、ビジネス戦略を進めます。工学者がただの思い込みで活動するのではなく、きちんと社会との接点を持つ。自分の足元を見つつ、顧客の声、世間の情勢などをふまえて、それらを基礎研究にも活かしましょう。国際規格ISOとIECで国際コンビナに就任した経験、大学発ベンチャーを起業した経験をふまえて、有意義な学生生活となるようサポートします。工業大学出身者として最低限必要な知識、スキル、コンピテンシーを鍛えましょう。

研究紹介

江田 英雄Eda Hideo

工学部 電子情報工学科 教授

脳計測から国際規格…スパイまで? 
様々な切り口から「情報の入力・出力」の根幹を学ぶ
PROLOGUE

江田先生のゼミ前には、様々なパネルが飾ってあります。チューリングやノイマンといったコンピュータ開発の先人たちが紹介されているかと思うと、著作権や知財、国際標準化規格に関する話があったり。画像処理・音声処理・自然言語処理の話があるかと思ったら、本居宣長の古文書やバッハの直筆楽譜のレプリカが掲げられていたり。脳活動計測の報告がある一方で、スパイ映画のポスターまで貼ってあったり…と、まさに多種多彩。実はこれらは、全て「情報の入力・出力」という視点でつながっているのです。「情報を伝達する通信技術やコンピュータ技術は日々新しいものが出てきます。それらはもちろん重要ですが、情報を送る側と受ける側にはヒトがいます。ヒトは情報をどう受け取り、どうアウトプットするか。それが情報技術の根幹。学生たちには、ここで情報の基礎を学ばせたい」と先生は語ります。

「ヒトはどう情報を受け取り、出力するか」が根幹

島津製作所、さらに国立研究開発法人である情報通信研究機構での勤務を通じ、私はずっと脳情報の研究に携わってきました。近赤外光を使った生体計測装置は、私が電気回廊とソフトウエアの設計に携わって世に出ました。静岡県の浜松の大学院に籍を移してからは、近赤外光による非侵襲な脳計測についての研究を続け、脳計測システムづくりを行ったりもしています。一方、知的財産をテーマとする講義も受け持ってきました。どれだけ良い研究をやって成果を得ても、知財を適切に管理する能力がないと、世界に普及しません。さらに、製品やサービス、システムなどにおける国際的な標準規格を制定するISOで、グループリーダー(国際コンビナ、と呼ばれるのですが)として日本発の規格を作る業務も経験しました。脳の研究から始まって測定装置づくり、さらに知財管理や国際規格の策定までと、研究をどのように世の中に送り出し、普及させるか、までの流れを一通り経験してきたわけです。
これらは全て「ヒトはどのように情報を受け取り、どう出力するか」という根っこでつながっています。この「情報の入出力」は、情報技術分野全体の根幹と言ってもいいでしょう。様々な経験を積んできましたが、私は改めてそこに軸を据えた基礎研究を、学生とともに行おうと考えています。理論だけでなくハードウエアとソフトウエアも含めた基礎を研究することでヒトが情報をやり取りするとはどういうことか、しっかり見据える姿勢を身に着けさせたいと思います。装置を使う機会があれば、NIRS(近赤外分光法)に限らずfMRI(機能的磁気共鳴イメージング)やEEG(脳波)などを用いた脳の計測と、そのデータ解析も体験してもらいたいと希望しています。

江田先生は、国際規格の作成や
知財管理も経験してきました

学生の研究はバラエティーに富んでいる

ゼミに所属する学生の卒研テーマも、私のキャリアを象徴するようにバラエティーに富んでいます。ある学生は、自分自身がバンドマンなので、音楽でよく言う“グルーヴ感”に興味が湧いたようです。それで、脳のどの辺りを刺激すればグルーヴ感が味わえるのか、というテーマに取り組んでいます。
バイクの振動が健康に与える影響について研究する学生もいます。彼はバイクが好きなので、そこから発想した、とのこと。ゲーム好きのある学生は、テレビゲームによって生じるストレスの軽減法をテーマに掲げました。動機は「ゲームを楽しくしたいから」らしいですが、ユニークな視点です。また、機械翻訳を選ぶ者、EVのさらなる進化に貢献したいと取り組む者、レーザーや光技術を利用してカビ防止技術を開発したい、と研究する者がいます。
実に玉石混交ですが、どれも「ヒトは情報をどうやり取りするか」、さらに「技術は世界をどのように変えていけるか」を基軸とする点では共通しています。学生が好きなように研究に没頭し、またいくらでも安心して失敗できるのは、この期間だけです。もちろん成功体験は必要ですが、学生時代はむしろ失敗を繰り返しながら、社会でエンジニアとして活躍するための基礎を習得してほしいですね。

先生が手にするのは、
脳の模型。先生自身の脳をスキャンし、
3Dプリンタで作成したものだそう

様々な切り口から情報技術の基礎を学ぶ

古文書を対象とした研究も行っています。例えば本居宣長の書いた文書は草書体の古文なので、現代で読める人は多くありません。どこかで古文学習の習慣が途切れてしまったせいでしょう。しかし「ある特定の人にだけ読める字」というのは、言ってみれば暗号みたいなもの。読める人は、膨大で貴重な情報にアクセスできるわけです。
同じ観点で、バッハやマーラーなど著名作曲家の書いた楽譜などにも注目しています。楽譜も音楽を学んだ人にしか読めない、特別な暗号です。読める人が見たら脳のどこかにスイッチが入って、頭の中に音楽が鳴り始める。この仕組みを研究すると、いろんな方面に展開するような気がします。
他にも様々なテーマがあります。情報には「インフォーメーション」と共に「インテリジェンス」という単語があるんです。最近研究が進んでいるAI(人工知能)のIも、アメリカの諜報機関CIAのIも、ともに「インテリジェンス」です。ところが、日本では、「インテリジェンス」という側面から情報を学ぶ機会は、多くありません。この点に焦点をあててもいいと考えています。別にスパイやハッカーを積極的に養成したいわけではありませんので、その点ご注意を。
「ヒトが情報を受け取り、アウトプットする」という情報技術の根っこを学ばせることで、エンジニアとして社会で長く活躍できる人材の輩出に貢献していきます。

本居宣長の古文書や
バッハの自筆楽譜も研究対象
ゼミ室には埴輪や遮光器土偶もありますが、
これは今のところ研究対象ではありません