建築デザイン学科
木下 美沙
教員紹介
プロフィール
- 【専門分野】
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○照明デザイン
○インテリア計画
○環境心理学
- 【担当科目】
- 色彩・照明計画 、 インテリア計画 、 製図技法 、 デザインスタディ 、 デザインスタジオ など
- 【研究テーマ】
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1.建築における照明デザイン
2.光と色彩の視環境と心理効果
3.都市における照明デザイン
- 【ひとこと】
私たちは周りの環境からさまざまな影響を受けています。お互いにどのような影響を与えているかを読み解いていくことは、その先の新しい生活や景色を生み出すデザインプロセスにつながっていきます。周りを観察し自分の感覚を磨いていきましょう。
研究紹介
木下 美沙KINOSHITA Misa
環境学部 建築デザイン学科 准教授
光をコントロールすることで、人と空間の関係がより豊かになる
PROLOGUE
飲食店に入った時、「ここは何だかホッとするな」と感じたり。またホテルに着いた時、「明るく華やかでわくわくした気分になるな」と思ったり。それぞれの店舗はいろんな工夫で、場にふさわしい雰囲気を作っています。建築物においてそうした雰囲気を生み出すのに欠かせない要素の一つが「照明」です。光をうまくコントロールすれば、伝えたいメッセージわかりやすく表現することもできますし、施設・空間を居心地の良い環境にすることも可能なのです。木下先生はライティングデザイナーとして、建築照明デザインの分野で多くの実践を積んできました。
照明は、空間の雰囲気に大きな影響を与える
見知らぬ街へ旅行し、ホテルに泊まる場合。どのような雰囲気で宿泊客を迎えるか、はホテルにとって重要です。疲れた体を癒やしてもらおう、と思うなら温かみのある雰囲気にしたいし、どう歩けばフロントに行けるのか、動線がわかりやすいように配慮することも大切です。そういった、非日常の空間を生み出すのに大事になってくるのが、ライティングデザインなのです。
“和”を感じさせたいなら、重心が低い照明にするといいでしょう。間接光を使い、陰影を生むと、日本的な和やかで落ち着いた空間になります。一方、リゾートのような華やかな空間にしたいのであれば、照明とクリスタルを組み合わせる演出、といったことが考えられます。同じ「ホテル」であっても、コンセプトが異なると、照明に求められる要素も変わるのです。
私は大学院修了後、建築照明デザイン事務所に就職。劇場や駅などの公共施設、ホテルや複合大型施設といった照明デザインプロジェクトに関わってきました。シンガポールや香港に駐在し、アジア各国のプロジェクトを手がけたこともあります。住宅・施設照明や景観照明に携わってきた経験を活かし、多角的に物事を捉え、広い視野で挑戦し続ける次世代のデザイナーを育成しようと、広島工大にやってきました。
科学的・論理的な手法を学んでほしい
昨今はLEDによって色温度を利用者が自由に変更できるようになり、バラエティーに富んだ空間づくりができます。私の手がけたプロジェクトの一例に幼稚園の照明があります。小さな子どもは、ちょっとした環境変化に敏感です。そこでみんなでダンスを楽しむ時は、爽やかで明るさのある白い照明にしたり、とか。落ち着かせたい時は、温かみのある落ち着いた照明にするなど、幼稚園の活動シーンに応じて照明をコントロールし、室内の雰囲気を変えられるように設計しました他にも図書館や消防署などの照明計画も担当しました。図書館も、本を選びやすくするための適切な明るさと、読書に集中できる柔らかな光環境が欠かせません。つまり、用途や利用者のニーズに応じた照明計画は、その空間の機能を最大限に引き出すために欠かせないものです。
照明の役割を効果的に発揮させるには、照明が人々の心理に与える影響を科学的に考察する姿勢も大事です。夜景を見て「美しい」と感じるのは、照明の点滅だけでなく、一定程度の暗闇が存在するからです。光と暗闇の調和によって「人が暮らしている」というイメージが生まれることで、見る人は美しさや安心感を覚えるのです。きちんとデータを取り、人々の心理にどう作用しているのかを分析する。学生には、そんな論理的な手法も、このゼミで学んでほしいと思っています。
学外のコンペにも積極的に参加
ゼミでは照明だけでなく、インテリア全般の研究に取り組んでいきたいと考えています。学外の方々から時々、インテリアについてのコンペの依頼をいただくことがあり、そういった案件にはゼミの学生とともに積極的にチャレンジしていくつもりです。
先日、「自社の会議室をリノベーションしたい」という企業のコンペに参加しました。新たな会議室にはどのような提案が必要なのかみんなで考え、素材を選んだりデザインを考え、図面を引いて提案書にまとめたのです。私は極力、アドバイスのみに徹し、提案内容を組み立てるのは学生たちに任せていました。
経験がないことで、学生たちは苦労したようですが、その甲斐あって、当ゼミの提案が見事採用に。今はクライアントと施工担当会社と一緒に、細部の詰めを行っている段階です。実際に世に出るプランを自分たちの手で生み出せたことで、学生たちにとっても大きな自信になりました。
室内照明、景観照明を中心として、インテリア全般まで。様々な学びを体験し、大きく育ってほしいですね。そして次世代の空間デザイン担う人材となってくれることを期待します。