広島工業大学

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広島工業大学

環境土木工学科

石橋 和葵

教員紹介

石橋 和葵ISHIBASHI Kazuki

工学部 環境土木工学科 講師

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○関数方程式論
○基礎解析学
○応用数学
【担当科目】
電気のための微分積分学A/B/C/D 、 電気のための線形代数A/B/C 、 微分方程式 、 応用数学A 、 応用数学B 、 応用数学C
【研究テーマ】
1.制御工学と関係が深いマシュー方程式の振動問題
2.常微分方程式と差分方程式を統一したハイブリッド方程式の解の振動性
【ひとこと】

大学での学びの出発点は知的好奇心です。どんなに小さなことでも果敢にチャレンジしてみてください。

研究紹介

石橋 和葵ISHIBASHI Kazuki

工学部 環境土木工学科 講師

飛行機がなぜ空を飛ぶか、数学的にはまだ完全に証明されていない?
PROLOGUE

国の人口が今後どれだけ増えるか減るか、なんてことがよくニュースになります。あるいは、感染症が流行った時、感染者数の変動はこれからどうなるか、とか。なぜこのような未来のことを予測できるかと言うと、偏微分方程式や常微分方程式と呼ばれる数理モデルを使っているからです。世の中のいろんな分野で多くの方程式や数理モデルが活用されているのですが、今もなお、解けない方程式が存在し、答えを導くための条件が明らかでない数式もたくさんあります。そういった謎を解明しようと研究しているのが、石橋先生です。

世の中のいろんな仕組みを、数理モデルで解明する

飛行機は日常的な交通の足として多くの人に利用されていますが、飛行機がなぜ空を飛ぶのか、数学的にはまだ完全に証明できていないのです。もちろん物理的には、安全に飛行する仕組みが確立しているので、危ないわけではありません。それでも、数理モデルによって解明できれば、飛行機のさらなる向上に貢献できるかもしれません。
同様に「構造は分かっているが、仕組みが数学的に解明されていない」例として、機械式柱時計などに用いられる振り子があります。古くから使われている技術なのに、数学的な証明が難しかったのです。私は他大学の先生との共同で、常微分方程式と差分方程式をミックスさせたハイブリッド方程式によって、振り子運動を捉えてみました。すると「すごく小さな力を加えることで、周期的で大きな動きが継続する」という振り子の動きの性質が見えてきたのです。
振り子の動きは、外から何も力を加えなければ、やがて止まってしまいます。ここに「小さな力を加える」という「不連続の状況」を作れば、振り子はより長く運動を続けられます。そのことがハイブリッド方程式で明らかになりました。

「中学までは数学が苦手でした」
と語る石橋先生

数式によってわかった、振り子運動が持続する理由

子どもがブランコに乗る時、座っているだけではいずれ止まりますが、大人が背中を押してあげると、動きが持続しますよね。あれが「小さな力を加えると動きが継続する」ということです。力の加え方もうまいやり方をすると、力任せでなくとも動きが長く続きます。物理現象を数理モデルで解明すると、そういったことも分かってくるわけです。これを産業に適用すると、ものづくりが効率的に行えたり、小さなエネルギーで製品を運べる、などにつながる可能性があります。
振り子などの振動を数学的に解明するため、私は常微分方程式の中でも特に、マシュー方程式の研究にも取り組んでいます。マシュー方程式はもともと、太鼓の膜を叩いた時に起こる振動をとらえるために生まれた数理モデルですが、振り子や電車のパンタグラフ、プロペラなどの動きの研究にも適用できることが知られています。また、セグウェイという乗り物を知っていますか?セグウェイに代表されるような、支点より重心が高い位置にある倒立振子は、古くから制御工学の題材とされてきました。この倒立振子を考える上でも、マシュー方程式は欠かせません。
マシュー方程式は、一定の条件をつけると近似解を求められますが、厳密な解の求め方はまだ解明されていません。そこでマシュー方程式の性質をもっと知ろうと、研究を続けています。

宮島まで見渡せる景色の良い研究室で、
数式と取り組んでいます

数学が苦手な人も、その奥にある概念を知れば、好きになれる

飛行機のように、既に実用化されているものの、数学的な証明がされていない構造や技術は、まだたくさんあります。それらを、常微分方程式やマシュー方程式を用いて整理すれば、製品やそれを生み出すための技術は、もっとレベルを上げられるはずです。解の定まっていない方程式と向き合い、その性質や解を導く条件を見出すことが、社会への貢献につながる。そう思いながら、私は数式・方程式と向き合っています。
私は中学の頃まで、算数・数学が苦手でした。計算ばかりでつまらないと感じていたのです。しかし高校に入り、数式の概念を学ぶようになってから、見方が変わったのです。方程式にはいろんな意味付けや定義があり、構築された論理の上に成り立つもの、と高校時代の先生に教わってから、興味を持って取り組めるようになりました。
ゼミの学生には、最初から難しい高等数学に取り組ませるのではなく、微分積分など高校の復習から始めてもらっています。そして数学の持つ意味、概念まで指導します。数学の面白さの本質を理解すると、自主的に学び始めるのです。今、数学に対し苦手意識がある人も、その奥の概念に触れると、きっと好きになれますよ。