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環境土木工学科

石井 義裕

教員紹介

石井 義裕ISHII Yoshihiro

工学部 環境土木工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○水工学
○流体力学
【担当科目】
水理学Ⅰ/Ⅱ 、 河川工学 、 都市総合工学B 、 設計製図 など
【研究テーマ】
1.太陽熱を用いた水生成に関する研究
2.河川氾濫水の挙動解析シミュレーション
3.湖沼内における水質改善シミュレーション
4.広島地域における大気流動と熱の輸送
【ひとこと】

大学では未知の物事をどのように捉え、理論的に解決していくかの道筋を学び取って欲しいと思います。

研究紹介

石井 義裕ISHII Yoshihiro

工学部 環境土木工学科 教授

発展途上国でも入手可能な簡素な材料だけで、
真水造水装置を作成する
PROLOGUE

水は生活と切り離せないもの。でも世界を見渡すと、日本のように、蛇口からきれいな真水がいくらでも出てくる国ばかりではありません。遠く離れた井戸に毎日水を汲みに行き、10kg以上にもなる水桶を抱え、1日かけて家までたどり着く、という人たちもいます。そんな地域で使用できる、太陽熱を利用した真水造水装置を研究するのが石井先生です。先生は専門である流体力学の知識をベースに、水や空気と地域の暮らし、環境や防災といったさまざまなテーマに取り組んでいます。

段ボールとビニール袋を使い、現地の暑い日差しを利用して蒸留水を取り出す

バングラディシュやスーダンといった発展途上国では、電気や水道が未整備な地域も多く、生活水の確保も困難です。女性が1日かけて数十kgにも及ぶ水桶を運んだり、濁った池の水を仕方なくそのまま使ったりしているのです。
そういう地域でも、海は近くにあります。であれば、海水や濁った池の水を太陽熱で蒸留すればいいのです。お金をかければ立派な淡水化施設を作れますが、そもそも電力も充分でなく、設備が機能しません。保守点検を行う技術も不足しているため、結局使われなくなってしまうのです。
そこで私たちは、現地にある物で作れるローコストの蒸留装置の研究に取り組んでいます。仕組みは簡単で、器に海水や池の水を入れ、周囲をビニール袋で覆い、屋外に出しておきます。赤道に近い国の強烈な太陽光にさらされて水が蒸発し、ビニールについて結露が発生します。この結露を集めれば、蒸留水が取り出せるわけです。濁った池や数kmも離れた井戸を使うことを考えると、遥かに良質な水が手軽に確保できます。
装置を作るのに必要な素材は、ビニール袋とダンボールだけ。壊れたらまた新しく作ればいいので、メンテナンスも不要です。
ペットボトルを使用する案もありましたが、ペットボトルは細工が難しく、光が散乱して蒸留効果を発揮しません。ダンボールにも水漏れ問題はあるものの、さまざまな点を勘案してこちらがベターと判断しました。
ゼミで装置を組み立て、実験してみると、投入した水の6割ほどを回収できました。装置を工夫したり、設置方法を変えれば、回収率の向上が見込まれるでしょう。いずれは現地で装置を組み立て、実験したいと考えています。

段ボールとビニール袋による
造水装置のモデル図
太陽光にさらされ水が蒸発し、
ビニール袋について発生した
結露を集めて蒸留水
を取り出す仕組み

河川氾濫時に重要なのは、「何分で水深はどれくらいになるか」

他にも私は「水と空気」の流れをベースとした、さまざまなテーマに取り組んでいます。河川氾濫が発生し、浸水が地下街に及んだ場合の影響を数値シミュレーションによって明らかにする、という研究もその一つです。
昨今は、豪雨による河川氾濫に備え、被害の広がりを解析して避難計画を立てる自治体も増えています。しかし私は、「この場所の水深は何分後にどれくらいか」を示すことが重要だと考えています。水深30cmだと、大人の男性でも水平方向に逃げることはできません。だから、水深30cmに達するまでの時間を知ることが重要なのです。水深30cm以上になったら外への脱出はあきらめ、2階以上の建物に逃げる避難方法を頭に入れておかなければなりません。

河川氾濫のあった地域のデータから、
対象とする場所の水深到達時間
をシミュレーション

実験と数値シミュレーションで、水や空気との向き合い方を考える

過去に起こった河川氾濫のデータをベースに、広島の太田川で同様の災害が起こった場合、水がどの場所に、どの程度のスピードでやってくるか、iRICなどのソフトを使ってシミュレーションしています。この成果を重ねていけば「大雨警報が出た場合、○○地域の人は○○時間以内に外部へ避難、その時間を超えたら2階以上に避難」という判断を自治体が行う基礎データとなるでしょう。
Open FOAMというソフトを使った熱流体解析にも取り組んでいます。例えば橋脚の円柱の周囲には、洗掘という土を掘り返した溝のようなものが自然に発生します。これは土木構造を弱める可能性があるため改善しなければなりません。こうした洗掘の仕組みを解析するわけです。
Open FOAMは、地下街防災を考える上でも有効です。地下に浸水があると、電気が消え真っ暗になるので、人々は逃げ道がわからなくなります。水を防ぐため、出口はどの程度素早く封鎖する必要があるか、浸水した場合の避難にどれだけ時間的猶予があるか、解析しておかなければなりません。
防災あるいは環境共生の観点から、水や空気とどう向き合っていけばいいか。実験や数値シミュレーションを駆使し、明らかにしたいと思います。