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環境土木工学科

伊藤 雅

教員紹介

伊藤 雅ITOH Tadashi

工学部 環境土木工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○都市地域計画
○交通計画
【担当科目】
交通計画 、 空間創造実習 、 地域課題解決実習 ほか
【研究テーマ】
1.次世代路面電車を活かした都市空間の創出:LRTの導入、トランジットモールの導入など
2.歴史的まちなみの歩行空間の創出:宮島・町家通りを事例とした無電柱化、街路景観など
3.交通安全環境を考慮した街路整備:生活道路におけるゾーン30の導入、環状交差点(ラウンドアバウト)の導入など
【ひとこと】

普段当たり前だと思っている、まちやみちのデザイン、公共交通の使い方などの暮らしのルールを、ちょっと常識から離れて見つめ直してみてください。そこから、新たな都市空間を創り出せるような知識と発想を身につけてくれることを期待します。

研究紹介

伊藤 雅ITOH Tadashi

工学部 環境土木工学科 教授

宮島の伝統的なまちなみを長く維持し、
後世に残すために必要なまちづくりの知恵とは?
PROLOGUE

コロナ禍により観光客数は大きく減ったものの、以前は年間460万人が来島していた、世界遺産の島・宮島。厳島神社の創建から続く伝統的なまちなみは、多くの人々の目を楽しませてくれます。一方、生活の場でもある宮島の町家通りの景観は、徐々に変わってきています。それらの変化と折り合いをつけながらも、宮島のまちなみを保全し、その価値を長く共有したい、と調査や研究を重ねているのが伊藤先生。先生は他にも都市計画・地域計画や交通計画など、まちづくりに関わるさまざまなテーマに取り組んでいます。

街路景観の保全、無電柱化などにつながる、多岐にわたる調査を実施

京都など歴史的なまちなみの残る地域では、街路景観を昔のまま保全しようといった試みが行われています。それらの全国の事例を参考にしながら、宮島について調査を行い、地域の方々とともに街路景観を考えていくのが、私の第一の研究テーマです。
宮島の町家通りは、昔ながらのまちなみがある一方、跡地が駐車場になっていたり、近代的な住居に建て替えられたりして、街路景観が揃っていない部分も点在します。車が通る道路なので、観光客がゆっくり散策できないという問題もあります。また電柱が景観の邪魔になっているなど、改善ポイントがたくさんあるのです。
そこで学生とともに、町家通りを歩く人の多さや車の台数について調査を実施。無電柱化を推進すれば、人々の景観に対する意識がどう変わるかなど、宮島の街路景観の現状をまとめ、今後の提言も行っています。
古い建物を修理したり建て替える時、デザイン面でどのような配慮をすべきか。町家通りの車の通行を、時間帯を区切って制限することは可能か。また無電柱化の推進には、どのようなプロセスが必要か…など。報告と提言は多岐にわたります。これらを地域に共有し、伝統的な街路景観の維持に役立てたいですね。

宮島の町家通り。
電柱などが伝統的景観の邪魔になっています
一般の方々を対象とした無料講座も
宮島で定期的に開催しています

路面電車などの交通ネットワークを活用した、人と環境に優しいまちづくり

「次世代型の路面電車を利用したコンパクトなまちづくり」も、私が取り組むテーマの一つです。
電車・バスなどの公共交通は「環境に優しい」のが特徴。鉄道のCO₂排出量は、マイカーと比べ10分の1ですし、渋滞や騒音の問題も小さなものです。ヨーロッパではこの特徴を活かし、都市の中心部にマイカーを入れず、路面電車とバス、自転車のみで移動するという規制を設ける街もあります。
日本ではそこまでいっていないのですが、次世代型の路面電車を活用し、コンパクトな都市を形成しているところはあります。富山がその代表例です。地方都市では郊外への人口の拡散が加速していますが、交通ネットワークの整備により、富山は人口の拡散が抑えられています。同様に、コンパクトなまちづくりを目指す他の都市の交通ネットワークはどんな状況か、時間をかけて追いかけています。
他に「生活道路における交通安全環境の評価」というテーマも進めています。住宅街を通る生活道路では、車のスピードを時速30km以下にしようという「ゾーン30」という規制が敷かれています。これについて調査・評価するのです。

自然災害がもたらす鉄道路線への影響についても研究を進める

ゾーン30の実施形態は多様で、道を狭くしたり、凸凹を設けて物理的にスピードを出しにくくした道路もあれば、路面標示だけのケースもあります。路面標示のみの場合、やはり車のスピードはあまり落ちません。どういった規制がどのような影響をもたらしているか、実態調査を通じて明らかにしていきたいと思います。宮島自体がゾーン30エリアですので、この研究は宮島の街路景観保全にも関わってきます。
もう一つ「自然災害によって鉄道路線が受ける被害」についても調査を行っています。豪雨に伴う土砂災害は、鉄道にも多くの被害をもたらしています。2018年に発生した豪雨災害では、山陽本線でも半年ほど不通になった箇所がありました。そこでJR在来線を対象にハザードマップと照らし合わせ、路線に自然災害のリスクがどの程度あるか検証するのです。通常は地図を見比べながら進めますが、時には被災路線に足を運び、どういった状況だと山が崩れて路線に影響を与えるのか、実地調査することもあります。現場に行くと、地図だけでは想像できない状況が把握できて、とても参考になりますね。
数々のテーマに取り組み、地域の発展や安全に貢献していきたいと思います。