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広島工業大学

電気システム工学科

吉田 義昭

教員紹介

吉田 義昭YOSHIDA Yoshiaki

工学部 電気システム工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○電気機器のモデリング及び電力システムのスマート化に関する研究
【担当科目】
電気機器A/B 、 電気基礎実験A(PBL) 、 電気応用実験A(PBL) 、 電気応用実験D 、 工業概論A/B 、 社会実践基礎 、 専門ゼミナールA/B
【研究テーマ】
1.電気機器(発電機、回転機、変圧器、インバータ機器など)のモデリングに関する研究
2.災害にも柔軟に対応できる電力システムの研究(太陽光発電の系統連系時の効率的運用や自立運転時の出力安定化など)
3.分散型電源が普及した配電系統の保護保安,電力品質の維持向上に関する研究
【ひとこと】

自分の殻を破る夢や目標に向かって、粘り強く行動しよう。ともに成長しよう。

研究紹介

吉田 義昭YOSHIDA Yoshiaki

工学部 電気システム工学科 教授

身の回りにあるあらゆる現象から
「電気」を生み出すことができる
PROLOGUE

東日本大震災以来、「電気」について考える機会が増えました。太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電の仕組みも構築され、整備されようとしています。しかし、環境に優しい新エネルギーは、太陽光や風力ばかりではありません。私たちの身の回りにもあるのです。これらをうまく発電に利用できれば、私たちは地球に過大な負荷をかけない暮らしを手に入れられるかもしれません。そんな暮らしを実現するため、吉田先生は電気についてさまざまな角度から研究を続けています。

「水飲み鳥」の動作を利用して電気を起こす

下の「水飲み鳥」をご覧ください。「水飲み鳥」は1946年に誕生した古いオモチャで、くちばしの先に水を置くと、口をつけ、起き上がるという振り子のような動作を繰り返します。この動作を利用し、発電できるのです。鳥のお尻に磁石をつけ、その下にコイルを置きます。すると、鳥の動作に合わせて磁石がコイルに近づいたり離れたりする時に、電気が起こります。
実は下のコイルは2万回巻いています。それによって生まれる発電量は、瞬間的に100マイクロワット足らず。3台の「水飲み鳥発電機」を2日間動かして静電容量0.33Fのコンデンサに貯まる電気はようやく3Vなのです。ラジオを5分程度聞けるほどに過ぎませんが、それでもこの仕組みが初めて紹介された2004年には0.03Vしかなかったことを考えると、だいぶレベルアップしました。
何より「水飲み鳥」は水の蒸発エネルギーだけで動いているので、CO2を排出しません。しかも、通常の発電機は騒音が発生しますが、「水飲み鳥」は風の音より静かです。まさに環境にやさしい発電システムなのです。
私たちの身の回りには、微小ですがクリーンで再生可能なエネルギーが多々あります。これらを利用しようという『エネルギーハーベスティング』の考え方は、電気分野にも応用可能です。

「水飲み鳥」が水を飲む動作を
繰り返すたび、
コイルと磁石が反応し、発電します
「水飲み鳥発電機」によってLED電灯を
光らせることができます

幅の狭い側溝を利用して簡易水力発電を稼働させる

「マイクロ水力発電」の研究にも取り組んでいます。基本はダムを使う通常の水力発電と同じですが、規模が違います。私たちが対象とするのは側溝のような場所です。水量はそれほど多くありませんが、溝の幅が狭いため、秒速1mと結構な流速が出ます。その側溝の段差がある場所に水車を設置します。それを自転車の発電機であるハブダイナモに連結するのです。小規模の発電装置ですが2~3Wの電力を発生させるので、スマートフォン充電やラジオ視聴ならできますし、蓄電すればパソコンなども稼働させられるでしょう。
マイクロ水力発電は、ある程度の水量・流速が見込める側溝なら、容易に設置可能です。発電量を上げるには、水の表面から水車と水の接地する面までの高低差がポイントになります。高低差は約30cmとそれほど高くない場所でも2~3Wが発電できたのですから、より条件の整った場所での発電量はもっと上がるでしょう。被災で停電した際の緊急電源として使うなど、用途は広いと思います。

側溝を利用して設置した水力発電。
幅が狭いため、ある程度の流速があります
水力発電設置の状態を模式化した図。
高低差は約30cm

電力品質の向上には、分散型電源の精緻な管理が不可欠

私がもともと取り組んでいたテーマは『分散型電源と配電システム』です。
今は民間企業が太陽光発電パネルを使い、1,000kWの電力を生み出すことができます。その分、電力会社は電気を作らずに済みますが、雨の日などは電力会社が補てんしなければなりません。電気が総量として足りているかどうか判断するには、分散型電源の管理を精密に行う仕組みが必要なのです。
また、電力系統のどこかに問題が起これば、電力会社は送電をストップして問題解消にあたります。この場合、メガソーラーなどが系統から切り離されずに送電を続けると、流れてはいけない箇所に電気が流れるケースも起こり得ます。放っておくと漏電や機器損傷、感電などにもつながりかねません。こうした事故を防ぐためにも、分散型電源を管理し、電力品質を高めることが重要。それが結果的に、環境に優しい新エネルギー型発電の普及を後押しするのです。
究極的には電力の自給自足ができる『マイクロスマートハウス』を実現したいですね。水飲み鳥発電機やマイクロ水力発電の例からもわかるように、自然に負荷をかけないで利用できるエネルギー量には限りがあります。ならば、その範囲内で生活を送ればいい。大量消費型の社会を続けようとするから、地球に過度な負荷をかけてしまうのです。それが本来の『サステイナビリティ』だと思います。