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電子情報工学科

小池 正記

教員紹介

小池 正記KOIKE Masaki

工学部 電子情報工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○計測工学
【担当科目】
電子計測工学(大学院) 、 組込みシステム 、 制御工学 、 応用電波工学 、 信号処理
【研究テーマ】
1.CNNによる画像データ認識
2.SDRを用いた信号処理
3.エネルギー伝送技術
【ひとこと】

目の前に困難な問題があっても、小さな課題に分割して目標を定め、一歩一歩、着実に仕上げていきましょう。達成した際の充実感の積み重ねが財産となり、不可能を可能とすることができます。

研究紹介

小池 正記KOIKE Masaki

工学部 電子情報工学科 教授

“超音波”を使えば、
空中のドローンに地上から電力を送れるようになる?
PROLOGUE

遠隔操作で自在に空中を浮遊するドローン。迫力あるフライト撮影や、小荷物の運搬に利用されるなど、多彩な可能性を秘めています。しかし現在、一般的なドローンが搭載するバッテリーで飛行できるのは10~20分程度です。もし、空中のドローンに地上から電力を送ることができれば、もっと長く飛べるようになるはず。でもそんなことができるのでしょうか?「“超音波”を使えば不可能ではありません」と語るのが小池先生。先生はセンサ開発やネットワーク構築に携わった経験を活かし、ワイヤレス空中給電システムなどの研究に取り組んでいます。

超音波を用いれば「聴かせたい人にだけ音を届ける」ことが可能

私たちが耳にする「音」というのは、一定の振動数を持つ振動波です。人間の耳は、だいたい20Hz~20,000Hzの範囲の周波数を音として捉えることができると言われており、これを可聴域と呼びます。可聴域を超えるものが「超音波」で、人間の耳には聞こえません。
超音波は指向性がとても高く、空間中を真っ直ぐに進む特性を持っています。この特性を活かし、胎児の診察に用いるエコー検査や、漁船が海中の魚の群れを探るソナーなどに応用されています。
私のゼミでは「超音波パラメトリックスピーカー」の研究を行っています。超音波に、人間の耳に聞こえる可聴音を搭載し、再生したい場所まで運ぶのです。普通、可聴音は分散するので、発生源の周囲にいる人すべてに均等に届きます。しかし超音波は真っ直ぐに進むため、ある特定の人にだけ音を届け、周囲の人には聞かせない、ということが可能。例えば広い工事現場で、特定の作業者にだけ必要な指示を出す、あるいはアミューズメント施設で特定の人にだけ音声を聞かせる、などの活用法があります。

ケーブルを使わない、ワイヤレスな給電システムにも、超音波が使える

実を言うと、超音波パラメトリックスピーカーは、一部実用化されています。しかし「音の伝達方法」については、まだまだ工夫の余地があります。私たちが考えているのは、可聴音を運搬する超音波に、別の超音波をぶつける方法。超音波同士がぶつかると超音波がキャンセルされ、後には可聴音だけが残り、そこにいる人にだけ音を届けることができます。従来方式に比べ、音声を聞かせたい場所・時間・人を、より柔軟に設定できるわけです。電車の警笛を進行方向のみに届けて注意を促す、といった使い方もできるでしょう。
ほかに「ワイヤレス空中給電システム」にも取り組んでいます。例えば、電動歯ブラシはケーブルなどを使わなくても、専用台に置くだけで充電できたりしますよね。これらは電磁誘導という方式で、ワイヤレスな給電を実現しています。
本ゼミでも、扁平(へんぺい)コイルを用いて巻き方や電圧などを工夫し、もっと効率的な給電・受電が行えないか、と研究を重ねています。さらに、電磁誘導にとらわれない給電方式はないか、と考えたところ、“超音波”はどうだろう?と気づいたのです。

コイルを使った電磁誘導方式の
ワイヤレス給電システム。
右のコイルは電源と
接しているわけではないですが、
左のスマートフォンの充電が可能です

狙った場所に電力を運べる超音波が、スマートフォンや電気自動車などの進化に貢献

超音波は可聴音の伝達手段になります。であれば、音と同じ「波」である電気に適用できないはずはありません。そう考え、手のひらほどのサイズの装置から電気エネルギーを搭載して超音波を発生させたところ、10数cmの空中にあるLEDを光らせることに成功しました。
これほど小さな装置でミリワットの電力を運搬できたのですから、可能性は十分。サイズを大きくすれば、大容量の電力も運べるでしょう。電気自動車を信号待ちの間に充電させたり、飛行中のドローンに給電させるなど、ワイヤレスな給電の仕組みを求める分野はたくさんあります。狙った場所に1ミリの狂いもなく送れる超音波は、有望な伝達手段の一つでしょう。スマートフォンの充電にも、ケーブルをつなぐ必要のないワイヤレス充電器が登場しています。
私はかつて、高温であったり高濃度の放射線にさらされる施設や、自然災害が発生した危険な場所で、センサによって状況を把握し、ネットワークを通じて情報収集するシステムについて研究していました。その経験を活かし、通信用アンテナとセンサを組み合わせ、遠隔での情報収集を可能にする装置の研究も行っています。あらゆるモノがインターネットに接続するIoTが進む中、通信機能を持つセンサの重要性はいっそう高まるでしょう。これからの時代に必要とされるプラットフォームシステムを提供していきたいですね。

超音波を使ったワイヤレス給電システム。
中央の黒い円柱が並んだ装置から、
電力を搭載した超音波が発生。
空中にかざしたLEDがそれを受け、
小さく緑の光を放っています
電波の通信が困難な水中でも、
超音波を用いるとワイヤレス通信が実現可能に