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広島工業大学

電子情報工学科

松林 弘明

教員紹介

松林 弘明MATSUBAYASHI Hiroaki

工学部 電子情報工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○内科学一般
○神経内科学
○精神医学
○薬理学一般
【担当科目】
医学概論 、 生命倫理 、 解剖学 、 看護学概論 、 臨床医学総論 、 キャリアデザイン演習 、 社会実践演習 、 基礎医学実習 、 医用工学演習 、 臨床工学演習
【研究テーマ】
1.病気の予防と克服に関する科学的健康法の研究
2.脳とこころに作用する薬物の作用機序解明
3.神経難病の発症機構解明と治療法の開発
【ひとこと】

「社会に奉仕する」ための技術や研究を支えるのは、若い君たちの発想力です。豊な発想力は、豊富な知識から産まれます。大学でその知識と技術をしっかりと学びましょう。

研究紹介

松林 弘明MATSUBAYASHI Hiroaki

工学部 電子情報工学科 教授

医療現場で壁に直面しても、論理的な解決策を自力で導き出す。
そんな臨床工学技士を育てたい
PROLOGUE

医療現場でチームの一員として働く臨床工学技士。生体医工学科では多くの学生が、専門的な知識や医療機器の操作、保守点検・管理方法を学び、6週間に及ぶ病院での臨床実習を経験して、臨床工学技士を目指します。そうした学生たちの学びをサポートする指導者の一人が松林先生。先生は、臨床実習など現場で得た体験をもとに卒業研究のテーマを検討するよう、学生にアドバイスすると言います。「実習で経験した患者さんの訴えなどが、学生の意欲を刺激するよいきっかけになる」と先生は話します。

患者さんの声を聞くことが、何よりも大事

私は臨床工学技士を目指す学生たちに、「実習で大事なのは、患者さんの声を聞くことだ」と教えています。現場には、患者さんの悩みやそれに対する医療従事者の配慮など、社会に出る前に知っておくべきリアルな姿が溢れています。患者さんの声や現場での経験が、学生たちをつき動かすエネルギーにもなるのです。
ある学生は「ゲートコントロール理論に基づく穿刺痛の緩和」というテーマに取り組みました。血液透析を行う場合、血管に針を刺します。針はたいてい、毎回同じ場所を刺すのですが、そうすると患者さんは痛みを感じるようになります。局所麻酔を施す場合もありますが、それ以外に痛みを緩和する方法がないか探そうと考えたのです。
痛みの感覚は神経細胞から脊髄、脳へと伝わることで認識されます。痛みを伝達する途中にはゲートが存在し、伝わり方をコントロールしている、というのがゲートコントロール理論です。私たちが痛みを感じるとき、その周囲に手をあててさするのは、痛みと別の部分に異なる刺激を与えることで痛みのゲートを閉じさせ、信号を脳まで伝わらなくする自然の防御反応だと言われます。
この理論をもとに、針を刺す部分と別のところにさする、冷やす、温めるなどの刺激を加えます。それによって痛みがどう変化したかを調べようという、ユニークな視点の研究です。

医療現場で役立つ、
実践的な知識と技術を学んでいます

臨床実習で得られた経験が、研究のテーマになる

「透析装置のアラーム音に対する患者のストレス」について取り組む学生もいます。人工透析を行っていると、時々アラーム音が鳴ります。透析の現場では決して珍しくないのですが、普段聞き慣れない音を聞いた患者さんは異変を感じ、不安を抱くこともあるようです。この不安の要因を明らかにして、解決策を検討しようというわけです。
テーマを設定した学生は、臨床実習に行った際、実際にアラーム音が鳴る場面に遭遇したようです。遠くにいる看護師や臨床工学技士にも聞こえるよう設定された音なので、いきなり鳴るとやはりビックリしてしまいます。それが不安の要因になるのなら、解消することが医療の質の向上につながります。これも現場の体験から生まれた発想でしょう。
「キンダリー透析剤AF3号調剤後の液温と時間経過によるpH変化に関する研究」というテーマを選んだ学生もいます。キンダリー透析剤AF3号とは、A液とB液を調合・希釈して用いる透析液のことで、臨床工学技士は毎朝この業務を行います。「毎朝行うものなら前もって調合し、作り置きしておけばよいのではないか」と学生が質問すると、「pHが変化したり、炭酸カルシウムによって機械が壊れるケースがあって、作り置きは難しい」と教わったとのこと。そこで本当に難しいのか、時間や気温の変化が透析液に及ぼす変化を調べようと考えたようです。

学生たちはユニークな視点で、
臨床工学技士としてのレベルアップ
につながる研究に取り組んでいます

学生自身にアイデアを出させる。それが現場で活かせる力になる

他にも救命救急処置法だったり、血圧コントロールだったり、ストレス解消といったさまざまなテーマに、学生と共に取り組んでいます。
私が心がけているのは、私が先んじてあれこれ言うのではなく、課題に直面したとき、どうすればその壁を克服できるのか、学生自身にアイデアを出させること。現場に出て、彼らは多くの事態に直面するはずです。もちろん、わからないことは周囲の先輩に聞けば教えてくれるはずですが、まずは自分で解決策を考えて進んでいかなければいけません。そのために、事実を客観的にとらえ、論理的な思考によって選択肢を見出す、という姿勢を、大学にいるうちに身に付けてもらいたいのです。たとえ自分の選択が間違っていても、結果をきちんと検証すれば、それも良い学びになります。学生たちのユニークなひらめきを大事にしながら、有為な人材を育てていきたいと思います。