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機械情報工学科

後藤 良次

教員紹介

後藤 良次GOTO Yoshitsugu

工学部 機械情報工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○振動モード解析
○摩擦振動
○システム最適化
【担当科目】
機械力学 、 設計製図 、 機械システム設計製図 、 実践基礎
【研究テーマ】
1.機械の運動・振動のメカニズム解析および制振に関する研究
【ひとこと】

良く学び良く遊べ!自ら行動することで、多くの宝物が得られ、夢や目標を実現できるでしょう。

研究紹介

後藤 良次GOTO Yoshitsugu

工学部 機械情報工学科 教授

“人”を中心に据え、動力学の視点でモデル化すれば、
機械はより使いやすくなる
PROLOGUE

パラリンピックを通じ、車椅子に乗ったままテニスやバスケットボールの試合を行うアスリートの姿を見る機会も増えました。車椅子に乗りながらの俊敏な動きは本当にすごいけれど、よく見ると、彼らは車を手でそれほどこぐことなく、体の重心移動でグイグイ車椅子が前進させているのがわかります。でも、電動でない通常の車椅子の場合、手でこがないと前進しませんよね。「それは“人の姿勢や動作を中心に据え、機械や移動体を動力学の視点でモデル化する”という発想が十分ではないからです」と後藤先生は指摘します。

カゴに車輪をつけただけで「便利になる」わけではない

スーパーでショッピングカートを使っているとき、荷物の重みでうまく操作できず、カートがあらぬ方向に曲がっていったことはありませんか?これはカートを作る際「人が取っ手を持ちながらどう動くか」という視点が十分ではないからです。車椅子はもう少し丁寧に作られているものの、やはり椅子に車輪をつけることが第一で、人の動作に対する考察は不完全に感じます。
私は「人の姿勢や動作を中心に据えて、機械や移動体を力学の視点でモデル化」することに取り組んでいます。人の動きにしっくりと馴染む機械や移動体(モビリティー)のあり方を考えていきたいのです。
車椅子なら、電動化すれば自力でこぐ必要はなくなります。しかし人間には「力の入れやすい姿勢」や「力を受けた時の動作」というものがあります。人間の骨格や姿勢、動作を活かすことを考えれば、もっと自在に動かせる機械や移動体ができるはずなのです。動力に頼るのではなく、体の動きだけで車椅子を俊敏に動かすパラアスリートの存在が、それを実証してくれています。
車椅子、ショッピングカート、自転車、スケートボードでも、あるいは自動車、飛行機、ドローンなど他のモビリティーでも、根本は同じです。身の回りにあるさまざまな機械や移動体にヒューマンダイナミクスの発想を取り入れ、動力学的にモデル化すれば、人間にとってもっと使いやすいものになります。それだけでなく、電力などを無駄に浪費しない、エコな機械・モビリティーが作れるはずです。

理にかなったモデリングができれば、不快は極限まで小さくなる

私は広島工大に赴任する前、自動車メーカー関連の研究所で、自動車の運動・振動を研究していました。動くものからは、たいてい振動が発生します。振動は騒音の原因となり、車内の快適性を損ねるだけでなく、運転手の疲労を増大させます。さらに大きな振動は機械の各部にダメージを与え、命に関わる事故を引き起こしかねません。そのため振動は何らかの方法で解消しなければなりません。これは自動車がエンジン車からEVや燃料電池車に変わっても同じこと。最近の車は軽量化のために樹脂を多用しますが、軽くなると振動は余計に発生しやすくなってしまいます。
振動が発生するのは、機械のどこかに設計の見落としがあるからです。理にかなったモデリングであれば、不快は極限まで小さくなります。そして理にかなった動きとは、とても美しいもの。この「動の美を極める」という考え方が、研究における私のポリシーです。
振動は騒音や事故の原因になると言いましたが、一方、人を快適にさせる音楽もまた振動から生まれます。実際、モビリティーではどうしても発生する振動を、心地よいものに変える工夫もなされています。これもまた動の美を極めた一つのあり方と言えるでしょう。
いずれにしろ重要なのは、「人が中心」であることです。

AIに全部委ねる前に、力学的な観点で機械を底上げすべき

モビリティーは今後、自動化・自動運転の方向へと進んでいきます。センサによって詳細に情報を取得し、AIで制御すれば、自動運転はいずれ実現するでしょう。
しかし、人の姿勢や動作に対するモデリングがおろそかであれば、AIの制御がどれほど高精度であっても、人の動きになじむものにはならないかもしれません。モビリティーの中に放置されたモデリングの見落としまで解消してくれるほど、AIは万能ではありません。
AIに全てを委ねる前に、人を中心に据えた力学的なモデリングで、機械やモビリティーの形を最適化しておく。そうすれば、AIの制御による自動運転は、もっと人間に近い、快適性の高い形が実現できるのではないでしょうか。そのためにも、まず力学のモデリングでしっかり底上げしておきたいのです。

理にかなったものは、美しい。
そんなモビリティーの開発に
寄与していきます