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建築デザイン学科

光井 周平

教員紹介

光井 周平MITSUI Shuhei

環境学部 建築デザイン学科 准教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○木質材料・構造
○数値シミュレーション
○歴史的建造物の構造調査
【担当科目】
建築一般構造 、 建築材料学A/B 、 建築材料実験 、 構造力学B 、 構造デザインB 、 製図技法
【研究テーマ】
1.木質構造の構造性能に関する実験及び数値解析
2.伝統的木造建築の耐震性能評価に関する実験及び数値解析
3.旧海軍関連施設を中心とした歴史的建造物に関する調査・研究
【ひとこと】

木材や木構造を通して建築構造の面白さを学生のみなさんに伝えられたらと考えています。近隣の歴史的建造物の調査などフィールドワークにも出かけていきます。何事にも積極的に取り組むことが自分の「やりたいこと」を見つける近道です。一緒に大学の外にも出てみましょう。

研究紹介

光井 周平MITSUI Shuhei

環境学部 建築デザイン学科 准教授

木材の特性をモデル化し、適切に耐震性を評価するには、
数々の課題がある
PROLOGUE

五重塔や東大寺など、古くに建造され、地震や台風などの自然災害にも耐えてきた木造建築が日本にはたくさんあります。それほど長い歴史を持ちながら、木造建築の耐震性をどう評価するか、という点については「まだまだ改善の余地が多い」と語るのが光井先生。先生は木材の特性を詳細にモデル化し、正確なシミュレーションを実現しようと研究を続けています。加えて、文化的・建築学的に価値の高い旧海軍施設の調査にも携わっています。

天然素材である木材が組み合わさった接合部の計算は難しい

下の写真を見て下さい。これは木造建築の接合部ですが、柱と貫(ぬき)が垂直に交わる箇所に、くさびが2つ刺さっています。伝統的な木造建築には、接合部をより頑丈にするためのこうした工夫が頻繁に用いられますが、この接合部の強度を計算するのは難しいのです。木材とくさびの強さ、打ち込む力、さらに木材が乾燥でどの程度収縮したか...などあらゆる要素を把握しないと正確に計算できない。しかし木造建築の接合部全てで詳細データを取るのは、時間がかかり過ぎてほぼ不可能。そうなると、重視すべきデータと簡略化できるデータを区別しなければいけません。そういった知見を積み重ねて木造建築を正確にシミュレーションし、耐震性を評価できるようにしたい。それが私の主要な研究テーマです。
天然素材である木材と木材が接合する部分では、地震など外部から力を受けた際に部材の一方がもう片方に「めり込む」現象が起こります。このめり込みという現象では、木材の繊維の方向に力を加える場合に比べて性能が半分以下にまで落ちてしまう場合もあるのです。木材の特性をモデル化し、めり込み現象などのメカニズムを正確に再現できるようにすると、木造建築のシミュレーション精度は飛躍的に高まるはずです。

木造建築の接合部を特別に縦で切って、
各パーツの構成を見やすくした模型。
縦の柱と横の貫(ぬき)が
垂直に交わる部分に、
2つのくさびが打ち込んであります

いずれは、木材で建てられた高層ビルも珍しい存在ではなくなる

日本には木造建築の長い歴史があり、伝統的な技法も蓄積していました。ところが明治に入り、建築技術が大きく変化します。欧米の建築技術を積極的に取り入れて従来の技術との融合が図られました。その後、関東大震災など度重なる自然災害や第二次大戦の空襲を経験し、次第に鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨構造(S造)が主流となる一方、木造の研究や技術開発は1995年の阪神・淡路大震災の頃まで停滞の時期を迎えます。
しかし今、再び木造建築が見直されています。木材は生育過程でCO2を吸収し、使用後は土に還る、環境に優しい資源です。日本は、この天然資源に恵まれています。そこで、木造建築のシミュレーションや耐震性評価に関する研究・知見を早急に積み重ねる必要があるわけです。
CLTという大変頑丈な材料があるのですが、これを利用し、海外では10階以上の高層ビルも建てられています。日本でも木材を利用した中高層建築物が次々と実現しており、木造建築の安全性に関する研究は今後ますます重要になります。

木材のサンプル。
容積はどの木材でも同じですが、
手に持ってみると重さは全く違います。
種類が豊富で性質も異なる木材を
モデル化するのは難しいのです

滅多に調査できない、旧海軍が残した建築の調査・研究にも携わる

私は2017年から、呉にある旧海軍関連施設の調査にも携わっています。当時在籍していた前任校の学生らと共に海上自衛隊の基地内に残る地下施設を調査、「地下壕探検マップ」にまとめました。まだまだ未解明なことが多い旧軍遺産を対象に、建築物の歴史や構造に関する研究に積極的に取り組んでいます。建築物を理解するには、内部に入って実際の造りを見るのが一番。実際に見てみると、戦前の建築技術を肌で感じることができます。
旧軍施設は、現在は自衛隊の管理になっていることも多く、簡単に研究・調査できません。その価値を学術的に評価されることもなく、老朽化で朽ち果てるケースも多いのです。後の時代に「復元しよう」となっても、詳細な資料・情報が残っていなければ困難です。各地で次々と消えつつある歴史的な建築物に光をあてるのも、地元に根ざす研究者の役割の一つと考えています。
私は建築構造が専門ですが、建築は歴史や文化の側面からもとらえることができる。また人間工学の要素もある。あるいは、建築をアートと呼ぶ人もいる。様々な要素を含むのが“建築”なんです。旧軍遺産の調査は、本来なら土木領域の研究かもしれません。でも私は歴史が好きなこともあって、積極的に取り組んでいます。それが自分の研究にもいずれいい効果をもたらすでしょう。

呉の旧海軍が残した地下壕を調査。
研究結果をまとめた「地下壕探検マップ」。
新聞は、その後発見された、
より規模の大きな地下施設の
調査の様子を伝える記事
呉を題材にしたアニメ映画のロケ地MAP。
かなり貴重なものです