広島工業大学

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広島工業大学

建築デザイン学科

杉田 洋

教員紹介

杉田 洋SUGITA Hiroshi

環境学部 建築デザイン学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○建築経済・ファシリティーマネジメント
【担当科目】
建築経営 、 住環境評価 、 建築法規 、 設計製図II 、 設計実習II 、 居住環境制御特論B(大学院)
【研究テーマ】
1.大学キャンパスにおけるFacility Management 「広島工業大学施設改造計画」広島工業大学の在学生評価に基づき、本学における施設環境の向上を目的として、本研究室で開発した施設環境評価手法に則り、広島工大の改善案について検討・提案する。現在、広島県内の他大学に対しても施設改造計画を提案している。
2.Life Cycle Management 「ライフサイクルコスト・顧客満足度・住環境評価」コンバージョンなどの建築再生における「コストプランニング」について検討する。
【ひとこと】

日本には約80億m2の建物がありますが、新築物件は年間でわずか2億m2です。現在、80億m2の建物の活性化をはかる「ライフサイクルマネジメント」という新たな産業が急成長しています。

研究紹介

杉田 洋SUGITA Hiroshi

環境学部 建築デザイン学科 教授

建物は完成直後から「汚れて」いく。
「建物を育てる」という発想が、建物の価値を守る
PROLOGUE

ちょっと立ち寄ったスーパーで「何だか汚れが目につくなあ」と思ったら、あなたは快適に買い物ができるでしょうか?買い物しようという気持ちも、萎えてしまうのでは?あるいは「ここ、古ぼけているなあ」と感じたマンションに、あなたは住みたいと思うでしょうか?ビルでもマンションでも、建物は設計・建設の期間よりも、使用する期間の方が遥かに長いのです。「その間ずっと快適に使用できる建物であるためには“建物を育てる”という発想が不可欠」と杉田先生は言います。

「エレベータ内」がキレイだと、人はそのマンションを快適に感じる

どんなに美しく仕上げた建物でも、人が利用するようになると、必ず汚れていきます。汚れた建物を人は不快に感じるので、清掃しなければなりません。しかし建物は広く、人の訪問もひっきりなしで、いくら清掃してもキリがありません。ところが、ここを重点的に清掃しておけば、人は快適に感じる…という場所があるんです。
マンションで言うと「エレベータの中」。エレベータ内ではすることがないため、操作パネルや階数表示板を見つめるでしょう?そこが汚れていると、みんな「このマンションは不快」と感じます。スーパーで言えば「レジ台周り」。ここも人々から見つめられやすい箇所です。レジ台を集中的にキレイにすると「このスーパーは快適」と感じる人が増えるのです。
人が「快適」と感じる建物に、利用者は集まります。マンションだと入居者が増え、家賃収入が上がる、スーパーだと商品の購入者が増える、という結果につながる。すなわち「建物の価値」を向上させることができるのです。

「建物の価値の維持・向上」に貢献できる人材が、まだまだ少ない

少子高齢化の今、新築物件をどんどん建てるより、「建てた物件を、できる限り長く使う」という発想が主流になっています。また、かつて建物は「所有」が当然でしたが、修理や保全を自分で行わなければならず、コスト負担がバカになりません。それよりも「借りて使う」方がいい、と考える人や企業が増えています。そうした建物を、証券などと同様に「投資対象」と見る投資家も登場しています。
建物が常に快適なら、多くの人や企業に「借りて」「使って」もらえます。多くの人や企業が利用する建物は一定の収益が見込めるため、投資家にとっても魅力的です。すなわち、建物を「できる限り長く使う」には、建物の快適性を保ち、価値を維持しようとする工夫や努力=プロパティマネジメント(PM)が欠かせない、ということです。
先に挙げた「建物のどこを重点清掃すれば、人は快適さを感じるか」という例は、PMの第一歩。日本では、PMのできる人材に対する社会的ニーズが急増しています。広島工大は、専門学科を設けプロパティマネージャー育成に早くから取り組んできた、日本では数少ない大学の一つです。

建物は使うほどに劣化する。
人々のニーズに応えるには、
適切なメンテナンスや改修を実施し、
建物の価値の維持・向上
を図る必要があります

適正なPMを行えば、建物は造った後も「育ち」続ける

PMには(1)入居者・利用者を集める(2)定期改修を行う(3)日常的メンテナンスを行う、という3つの役割があります。特に(3)は日々のことだけに、キメ細かく実施しないといけません。
メンテナンスを丁寧に行えば建物の快適性は向上しますが、それだけコストがかかります。メンテナンスコストの上昇が利用費、すなわち賃料の高騰を招けば、利用者から敬遠されます。また利用費は上がらないのにメンテナンスコストが上昇すると、全体収益が下がるため、投資家から好まれません。
つまりPMには、最低限のコストで最大限の価値創造を図る発想が求められるわけです。清掃一つをとっても、重点箇所を決めて行うような工夫が必要。大切なのは利用者も投資家も納得できる合理的基準を設けることです。この基準は①現状の評価 ②利用者の要求度 ③利用者の満足度を勘案して決定します。メンテナンスの品質とコストのバランスが最適であることを合理的に提示できて初めて、建物の価値は維持・向上するのです。
建物の新築~解体までのライフサイクルコストを見た場合、企画・設計にかかるコストは1%、建設に20%、解体に1%。残り80%近くが運用にかかるおおよそのコストです。「つくる」より「使う」にかかるコストが圧倒的に大きいのです。しっかりPMを行えば、コストを抑えながら建物の価値を最大化できます。PMがあれば、建物はずっと「育ち続け」るのです。

オフィスなどの事務所用建物の
ライフサイクルコストを見ると、
80%以上は運用管理に
かかっていることがわかります