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建築デザイン学科

髙田 宏

教員紹介

髙田 宏TAKATA Hiroshi

環境学部 建築デザイン学科 准教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○建築環境・建築設備
【担当科目】
建築デザイン数理 、 AI・データサイエンス入門 、 デザインワークショップ 、 デザインスタディA/B/C/D/E/F/G/H 、 建築デザインとデータ解析 、 デザインスタジオ 、 BIM実習 、 環境工学A 、 環境工学基礎演習 、 建築設備演習 、 専門ゼミナールA/B
【研究テーマ】
1.モンテカルロ法によるシミュレーションを用いた新しい給水給湯負荷算定法の開発
2.BIMを用いた給水給湯負荷算定シミュレーションによる最適設備設計に関する研究
3.生活行為と住環境計画に関する研究
4.家庭における親子の省エネ行動定着に関する研究
【ひとこと】

建築の環境や設備のことを普段意識することは少ないのではないでしょうか。それは快適だから、困っていないから。しかし、暑い・寒いのように環境を不快に感じたり、トイレが詰まるように設備が壊れて使い難くなったりすることで、初めて意識する分野かもしれません。普段意識しないものをデザインすることについて、一緒に学んでいきましょう。

研究紹介

髙田 宏TAKATA Hiroshi

環境学部 建築デザイン学科 准教授

「水の使われ方」に注目すれば、建築物はもっと地球に優しくなる
PROLOGUE

「無駄なエネルギーを使わない」「CO₂排出量を極力抑える」という環境負荷低減の考え方は、建物をつくる上でも広く浸透しています。特に空調設備については、これらを目的とした研究がなされ、実際の空調設備に取り入れられたものもたくさんあります。その一方、見落とされがちなのが「水」です。給水・給湯設備は建物にとって、空調設備と同じくらい重要なもの。なのに、環境負荷低減といった面があまり注目されていません。そこで、給水・給湯設備を対象に研究を続けているのが髙田先生です。

「1世帯あたり1日1000リットル」の水の想定使用量は、時代に合っていない

現在、建物をつくる上で、配管やポンプなど、給水・給湯に関わる設備をどう取り扱うか知っていますか?例えば住宅の場合、1人あたり1日で200~300リットルの水を使うと考えます。4人家族だとすると1日およそ1000リットル。さらに集合住宅なら、これに世帯数をかけると、1日あたりの想定水使用量が算出されます。この数値をもとに、給水・給湯の各種設備・機器の大きさを決め、タンクや配管などを設計するのです。
ところがこの設計に用いる数値は、数十年前から変わっていません。最近は少子化や核家族化で、1世帯あたりの平均人数が3人を下回っています。また、技術の発達により、トイレや洗面、お風呂、キッチンなどで使う設備の節水機能の向上は目覚ましいものがあります。
そうすると、1世帯あたり1日1000リットルを想定した給水・給水設備は、オーバースペックではないでしょうか。使用量に見合わない設備は、無駄なエネルギーの発生原因です。配管なども、多くの量に対応するためには、大きなサイズを用意する必要があります。よりサイズの小さいタンクや配管でOKなら、その分だけ居住スペースは広くなるわけです。
そこで私は、モンテカルロ法という数学的なシミュレーションを用いて、給水・給湯における負荷を適切に算定する研究を行っているのです。

生活の利便性と省エネ・環境負荷低減を両立させる「水の基準」が必要

最近はタワーマンションも多く建設されるようになりました。タワマンの高層階にどうやって水を供給しているかと言うと、ポンプを動かし続けているのです(途中階にタンクを設置する場合もあります)。これは一般のマンションでも同様です。高置水槽を使わず給水できるようになった技術の進歩は素晴らしいのですが、そこで常にエネルギーが使われることになります。適切な使用水量がわかれば、エネルギーの浪費を防げるわけです。
各種設備の節水機能の向上を知りながら、多くの設計者が昔からある「1人1日何リットル」という基準にこだわるのは、その方が安心だからです。水は食事にも使いますし、衛生面でも欠かせない生活の基盤です。水が不足すると、生命すら脅かされる可能性もあります。水不足の心配をするくらいなら、無駄とわかっていても安全・安心のために多めに見積もって設計した方がいい。そんな心理が働くのも無理はありません。また、自然災害の多い我が国では、災害時の水源確保として給水タンクの役割も重要です。
省エネ・CO₂排出量低減といった課題にも対応し、自然災害にも備える。そのためには、生活の利便性や衛生面を損なうことなく必要な水量を供給し、無駄なエネルギーを消費しない。そういった給水・給湯設備の基準を、早急に提示する必要があります。

給水・給湯の負荷を算出するためのモデル。
キッチンやトイレなど各用途の
水使用量がわかります

給水・給湯の負荷を算出できる、誰もが使えるモデルを完成させたい

研究対象とする建物は、戸建住宅から集合住宅、オフィスビルや病院やホテル、大規模商業施設と様々。これらの建物で、どういう水の使われ方をしているか調べ、キッチン・お風呂、トイレなど各用途に応じてモデルを作っていきます。
最近、特に注目しているのは病院や温浴施設です。他の建物はこれまでに様々な研究がなされ比較的多くの積み重ねがあるので、モデル化するためのデータが集まっていますが、病院や温浴施設は十分とはいえません。病院は、他の建物にはない特殊な設備・機器がたくさんあって、水の使われ方が異なります。一方、温浴施設は大量のお湯を使用します。お湯の場合、温めて循環させて使用します。省エネを第一に考えるなら温度を低くした方が良いのですが、それでは細菌発生など衛生上の問題があります。このように、病院や温浴施設は考慮しないといけない点が多いため、モデル化には多くのデータが必要なのです。ゼミの学生が興味を持つなら、病院や温浴施設などで現地調査を実施してみたいですね。
建物における給水・給湯負荷を算出できるモデルが完成すれば、給水・給湯設備の設計が容易になります。このモデルをBIMなどと連携させれば、さらに使い勝手がよくなるでしょう。省エネ・環境負荷低減を考えた設計を実現するため、モデルのさらなる向上に努めたいと思います。

給水・給湯負荷の算定に関する
書籍の著者として名を連ねています