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情報工学科

吉野 聖人

教員紹介

吉野 聖人YOSHINO Kiyoto

情報学部 情報工学科 助教

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○グラフ理論
○符号理論
【担当科目】
情報セキュリティ 、 情報リテラシ 、 専門ゼミナールA・B 、 HIT基礎実践A・B・C・D 、 HIT応用実践A・B・C・D 、 ネットワークシステム設計 、 プログラミング基礎I・II 、 プログラミング入門
【研究テーマ】
1.3格子を用いた等角直線族の研究
2.グラフ上の量子ウォークの周期性の研究
【ひとこと】

大学の勉強は面白いのでぜひ色々学んでみてください。私とも色々と研究したりしましょう。とにかく多様な機会が大学にはあると思うので、ぜひそれらを活用してください。

研究紹介

吉野 聖人YOSHINO Kiyoto

情報学部 情報工学科 助教

ネットワーク内で「最短ルート」を探すには、
適切な数式モデルが欠かせない
PROLOGUE

今やすっかり私たちの日常に浸透したインターネット。スマホやパソコンからアクセスし、必要な情報を探したりネットショッピングしたり、動画を楽しんだりと自由に使っています。ですが、このインターネット、まだまだアクセスを早くするために工夫できる、と語るのが、吉野先生。先生は、インターネットを始めとするいろんなネットワークを対象として、もっと扱いやすくする方法を、数学的な立場から研究しています。

指数関数的に拡大する組み合わせから、「最短」を選ぶ

見知らぬ土地で、地図だけを持って目的の場所に行こうとする時、みなさんはどうしますか? まず地図を広げて目的地と現在地を確認し、最短ルートを検討するでしょう。しかし知らない土地の込み入った場所だと、どっちのルートが早いか迷うこともあるはずです。
実は、インターネットに代表されるようなデジタルのネットワーク内でも、最短ルートを探すのはとても困難な作業なのです。デジタルなネットワークでは、0と1の二者択一によって情報の伝達が進んでいます。もしゴールまで10回の分岐があるとすると、2の10乗、すなわち1000を超えるルートのパターンが存在することになります。最近はシステムの進化が早く、分岐の数はどんどん増えています。それだけ、困難の度が増している、ということです。
ハードウェアの処理能力も日々向上しています。しかし、指数関数のレベルで拡大する無数の組み合わせの中から最適のルートを選び出すには、ハードの向上だけでは到底追いつきません。そこで私は、適切なアルゴリズムの構築に寄与する、数式モデルや数学的理論に取り組んでいるのです。具体的には行列計算などを用いて、空間内に広がる等角直線族などの性質を研究しています。

研究室のホワイトボードは
行列計算で埋まっています

量子コンピュータのアルゴリズムにも貢献

ネットワーク内の最短ルートを探せなければ、情報処理に時間がかかってしまいます。ネットサーフィンしているくらいなら問題はないでしょうが、例えば車の自動運転などを考えればどうでしょうか。システムがあらゆる状況を理解し、安全な走行のため最善の判断をするには、可能な限り早い情報処理が不可欠。そこで「最短ルートを探す」知識・技術が役立つのです。
量子コンピュータを対象としたルート探索のための研究も行っています。従来型コンピュータで100時間かかる処理を、量子コンピュータなら10数秒で行えると言われるので、スピードは段違いになるでしょう。ただし、従来型とは動作原理が全く異なるため、アルゴリズムも刷新しなければなりません。最短ルートを探索するための数式モデルも変えないといけない、ということです。
量子コンピュータには、量子ウォークと呼ばれるランダムな動きがあります。ある点が次にどこに現れるかはランダムなのですが、その確率は計算で求められます。より精密な数式によって確率を高めれば、ランダムな点の現れ方を事前につかまえ、最短ルートを見つけることができます。何とか量子コンピュータに貢献できる数式モデルを見出そう、と日々奮闘しています。

最短ルートの探索は
根源的なテーマなので、
解決が容易ではありません

数学の理論が、ICTの土台を作っている

数学と情報は、とても近い領域にある学問です。スマホでもパソコンでも、普段は意識しませんが、中で動いているアルゴリズムは、数学をベースとして組まれたものばかり。より早く、便利で、効率的で、無駄なエネルギーを使わないシステムを構築するには、適切な数式モデルの応用が欠かせないのです。
ゼミの学生は、みんな数学が得意、というわけではありません。それでも全然構いません。彼らには、できるだけ自分が興味の持てる研究に取り組んでほしいと思います。学生は何かのシステムをプログラムしたりする方が好きみたいですが、私も中学時代からプログラミングしていましたし、学生と一緒に楽しみながら取り組みたいと思います。学生の自由な発想に刺激を受けることもあって、自分の勉強にもなっています。
そういった研究の過程で、少しでも数式の持つ意味や、システムの土台にある理論に触れてくれればいいな、と期待しています。数学がそんなに好きでなくても、その価値を理解していれば、いずれ社会に出てシステムづくりと向き合う時、きっと役に立つでしょう。

研究の参考資料や講義のテキストなど