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機械情報工学科

太田 高裕

教員紹介

太田 高裕OHTA Takahiro

工学部 機械情報工学科 教授

研究紹介

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○ものづくり技術(機械) 材料力学、機械材料
○ものづくり技術(機械) 加工学 / 塑性加工、溶接
【担当科目】
機械要素の設計A/B 、 材料力学A 、 設計製図B 、 機械システム設計製図 、 実践基礎B 、 専門ゼミナールA/B
【研究テーマ】
1.ショットピーニングを用いた残留応力制御
2.ピーン成形における成形形状の予測と制御
3.リベット接合などの機械的接合法
【ひとこと】

大学の4年間は非常に大切な時間です。 自ら学び、自ら行動する姿勢を身につけましょう。 授業だけでなく、サークルやボランティアなど多くの活動を行い、経験を深めてるとともに、多くの友人と交流を深めればよいと思います。

研究紹介

太田 高裕OHTA Takahiro

工学部 機械情報工学科 教授

小さな硬い球を使い、金属を頑丈にする。そして成形する
PROLOGUE

針金を手で一回折るだけでは、針金が切れたりしません。しかし折って、伸ばして、を何度も繰り返していると、やがて針金の曲がった部分がプツンと切れてしまいます。1回だけなら何ともないダメージでも、何度も繰り返すと「疲労破壊」という現象が起きます。この疲労破壊を起きにくくし、金属表面の疲労強度を向上させる方法として、「ショットピーニング」があります。そのショットピーニングをベースに、活用法を研究しているのが太田先生です。

繰り返し同じダメージを受けるうちに、金属も疲労する

ショットピーニングというのは、鋼やセラミックスでできた直径1~0.01mm程度の小さな硬い球を、高速で金属表面に衝突させる技術です。数千、数万に及ぶ小さな球が衝突した金属には、表面近くに圧縮残留応力というものが与えられ、表面が強くなります。これによって、疲労強度が向上し、繰り返しの負荷に耐えられるようになるのです。
空を飛ぶ飛行機の翼や胴体には、空気抵抗や重力、気圧差など大きな荷重がかかります。そのため、飛行機の部品にはアルミニウム合金などの頑丈な金属が用いられます。一度のフライトでアルミニウム合金が壊れることはまずありませんが、フライトを繰り返し、荷重を何度も受けるうち、金属も「疲労」し、壊れることがあります。
ショットピーニングにより疲労強度を向上させておけば、疲労破壊が防げます。自動車のエンジンピストンやクランクシャフト、バネといった重要部品にも、ショットピーニングが用いられています。
ショットピーニングは、1940年代にはもう使われていました。しかし、ショットピーニングによってどのような現象が起こっているのか、実際に計測して調べた研究はあまりありません。そこで私は、高速度カメラで小さな球が飛ぶ様を撮影し、球のそれぞれのスピードを測ってみました。

ショットピーニングを実行する装置

高速度カメラによる計測でわかった、ショットピーニングのメカニズム

ショットピーニングを実施する上で、一番大事なのは、金属の表面に衝突する小さな球の速度です。調べてみるとその速度は、ノズルから打ち出された瞬間ではなく「ノズルから少し離れた位置で速度が最も速くなる」ということがわかりました。これは球を圧縮空気で打ち出しているからだと思われます。球を打ち出すと、圧縮された空気が急激に膨張し、膨張が最大になった瞬間、球のスピードも最大になります。その後、球には慣性力があるため、大きな減速もなく金属表面に到達します。
また、打ち出された球の速度は「ノズル中心付近が一番速く、周辺に行くごとになだらかに遅くなっていくのではないか」と推測していました。すなわち、釣り鐘のような形をしたガウス分布になるのではないかと。しかし、実際に計測してみると、中心部が速いのはその通りですが、釣り鐘形ではなく、台形になっています。つまり、同じ速さの球が中心部だけでなく、広い範囲に分布しているのです。このような速度分布になっている、という計測は過去にありませんでした。ショットピーニングのメカニズムを解明する上で、貴重な資料になるでしょう。

高速度カメラで撮影した、
直径0.5mmの球が噴出される様子[1]

ショットピーニングと、プレス加工や熱処理を組み合わせる

今、主眼を置いているのはショットピーニングを利用した成形、つまりピーン成形に関する研究です。厚さの薄い金属の板にショットピーニングすると、板が変形します。これを利用して金属の成形を行うのです。このピーン成形は、飛行機の主翼などのような、大きくて複雑な形状の成形の求められる分野で活用されています。対象材料を問わないのも特徴の一つで、ハイテン(高張力鋼板)やチタン合金、ニッケル合金といった硬い素材でも大丈夫です。
さらに発展させ、ピーン成形とプレス加工といった複合加工の研究も進めています。プレスで金属を曲げようとしても、プレス後に金属が戻ってしまう「スプリングバック」という現象があります。金属を90度に曲げようとプレスしても、スプリングバックにより100度くらいに戻ってしまうのです。ハイテンやアルミニウム合金などでスプリングバック量が大きくなるため、金型などで調整して抑制します。
そこでプレスの際、ショットピーニングを行います。するとスプリングバックが減少し、素材は90度に曲がったままの形状を保つことができるのです。他にも、熱処理とショットピーニングを組み合わせるなど、多彩な応用が考えられそうです。今後も様々な角度から、ショットピーニングについて研究を深めていきます。

プレスしても戻ってしまう(右の赤の図)のですが、プレスと同時にピーン成形を行うと(中央図)、スプリングバックが
抑制されます[2]
右がプレス加工したもの。左がプレス加工にショットピーニングを加えたもの。スプリングバックが抑制されている様子がわかります

出典
[1] T. Ohta, S. Tsutsumi, N. Ma, Direct measurement of shot velocity and numerical analysis of residual stress from pneumatic shot peening, Surfaces and Interfaces, 22(2021), 239-244.
[2] 太田 高裕, 仲田 優希, 中村 優介, プレスV曲げにおけるショットピーニングによる曲げ角度の制御, 塑性と加工,論文ID:250501(2025)