建築デザイン学科
南雲 要輔
教員紹介

プロフィール
- 【専門分野】
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○建築設計
○都市計画
○建築社会システム
- 【担当科目】
- 建築構法 、 住居デザイン実習A
- 【研究テーマ】
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1.環境配慮型建築・持続可能な建築空間の提案
2.保存対象建築を含む既存建築・都市の活用
3.設計プロセスにおける協働のシステムに関する研究
- 【ひとこと】
建築という創造行為は、市民の共感を得ることで価値が生まれ、公共性を持ち、次の世代へ受け継がれ、都市を形成する尊いものです。都市計画的に、敷地をより広い既存都市の中で俯瞰し、敷地から周囲へとより良い影響を生み出そうとする視点を持ち、期待される都市・建築環境のアイデアを考え、既成概念にとらわれない提案をしましょう。
研究紹介
南雲 要輔NAGUMO Yosuke
環境学部 建築デザイン学科 教授
そこにあるものを活かし、環境と調和する、サスティナブルな建築を追究
PROLOGUE
今や建築は、単に目立つ建物を作ればいい、といった単純なものではなくなっています。経済的にはもちろん、社会、都市、地域、あるいは環境、エネルギーといった様々な観点から都市のあり方を見つめた建築が求められる時代となっているのです。地域にあるものを活かし、環境と長く調和することを主題とした建築を手掛けてきたのが南雲先生。先生は、「どんな都市・建築であるべきか、を見極め、最小のエネルギーで最大の効果が得られる、時代の変化にも耐え得る建築デザインが大事」と語ります。
学生が奈良県のコンペに参加し、一次審査入選
私はゼミの3年生5人とともに、奈良県葛城市にある「かつらぎみらいの森」施設活用のためのコンペに参加しました。ここには、奈良県が保有する研修施設の本館棟・宿泊棟・体育館があります。しかしコロナ禍で利用されなくなり、閉館したのです。全てを更地にして、新たな施設を作るのはお金がかかり過ぎますし、施設がそこまで古びたわけでもありません。「そこにあるものは、できる限り活かそう」というのが私たちの出発点でした。
奈良県のコンサルタントにも加わってもらい、細かな意見をお聞きしました。そして学生たちは、各施設を地域外の観光客とともに、地域内の住民も利用できる施設にすることを考えたのです。
本館には宿泊施設を設置し、地域外からの観光客を呼び込みます。一方、従来の宿泊棟は地域の高齢者向け施設として再生。体育館は道の駅と連携し、地域の産物を売るマーケットにします。そして、池のほとりに円形劇場を設置。コンサートなどのイベントを開催できるようにします。劇場のステージには噴水を配し、子どもたちが水浴びを楽しむこともできます。
そこにある施設と自然を調和させ、多彩な人々が集まる場所に変貌させた学生のプランは高く評価され、一次審査入選の一作に選出されました。学生たちには、地域に求められるサスティナブルな建築を考える良いきっかけになった、と思います。
「かつらぎみらいの森」再生プラン
地域が良くなるような建築を生むのが、プロの建築家の役割
私は大学を出た後、竹中工務店で建築設計を担当しました。9年間働いた後、イギリスに留学。そして卒業し、Michael Hopkins and Partners(現:Hopkins Architects〈ホプキンス・アーキテクツ〉)という建築設計事務所に就職したのです。ホプキンス・アーキテクツは世界各地の案件を手掛けており、私もアメリカやドバイ、そして日本の建築にも携わりました。
日本では一級建築士でないと建築設計できない、と法律で定められていますが、イギリスではそんな規制はありません。誰でも設計できるので、一般住宅などは地元工務店でも設計しています。では、プロの建築家はどんな仕事をするのか。アートのように特別な「建築」を生み出すのです。ですから公共建築や、地域のシンボル的なものを手掛けていました。それくらい、プロの建築家が作るものは別物なのです。
また建築家が都市計画に関わるのも象徴的でした。日本で都市計画を行うのは都市計画家や土木の専門家ですが、イギリスでは建築家が主導します。都市のマスタープランを出すのも建築家です。
そういった経験を積む中で学んだのが、「建築家は地域や環境、そこに暮らす人々に対して、いい影響を与えるような建築を作らなければならない」ということです。その建築が生まれることで、良い町になる、環境が良くなる。それが建築家のめざすべき目標だ、と。
Photo:鈴木研一
Photo:Janie Airey
環境配慮型の公共建築で、高い評価を獲得
ホプキンス・アーキテクツ時代、取り組んだ作品の一つが、東京の新丸の内ビルディングです。1952年建設の9階建ビルを、歴史に配慮しながら35階の現代的建築にリニューアル。2010年からは100%再生可能エネルギーを利用したCO2排出ゼロのビルになっています。
ロンドンのブレント・シビックセンターは、都市と公共と行政の機能を統合した多目的施設です。コミュニティーの中心となるこの施設では、日除け、自然換気、再生可能エネルギー発電機などを活用。CO2排出量の大幅な削減を実現、高い評価を得ました。
ロンドンの聖トーマス病院が設立されたのは12世紀。ナイチンゲールが看護学校を設立したことでも知られます。そのイーストウイングは1966年竣工の病棟で、雨漏りや過度な熱負荷、エレベータの不足といった問題を抱えていました。そこで、病棟を使用しながらのリニューアルを敢行。漏水箇所を補修した上で、ガラスのカーテンウォールで建屋を包みこんだのです。これにより、地域住民に親しまれていた既存の外装を残すことができただけでなく、新たに生まれたスペースにエレベータの設置が可能になりました。
実務において築いてきた経験や知識を基に、学生たちと一緒になって、カーボンニュートラルの時代にマッチする、環境と調和したサスティナブルな建築を追究していきたいと思います。
Photo:Morley von Sternberg
聖トーマス病院の1966年に竣工した病棟を、
使用しながら増築改修/
Photo:Janie Airey