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広島工業大学

食健康科学科

角川 幸治

教員紹介

角川 幸治KAKUGAWA Koji

環境学部 食健康科学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○食品学
○応用微生物学
【担当科目】
食品学概論 、 食品衛生学 、 新食品開発 など
【研究テーマ】
1.プラズマ処理技術を用いた新規食品殺菌装置の開発
2.発酵食品の機能性に関する研究
3.微生物が生産する有用物質に関する研究
【ひとこと】

皆さんの夢は何でしょうか?
大学には夢を叶えるための「道具」がたくさんあります。
皆さんの夢の実現のため、大学を有効活用してください。

研究紹介

角川 幸治KAKUGAWA Koji

環境学部 食健康科学科 教授

微生物の力を利用し、過去にない食品や製品を開発。
さらに新たな食品殺菌の手法を追究
PROLOGUE

味噌、醤油、お酒、ヨーグルト、パン。これらの食品は、どれも微生物の活躍によって作られています。醤油は大豆を麹(こうじ)菌が分解し、その後、酵母などが働いて作られます。ヨーグルトは牛乳などに乳酸菌が作用して⽣まれます。食品だけでなく、私たちの身の回りには数々の微生物がいろんな場面で働き、生活を助けてくれているのです。そんな微生物の力を利用し、さまざまな問題を解決しようと研究しているのが角川先生。また先生は、食の安全・安心に関わる食品殺菌に関する研究にも力を入れています。

これ1つで、1日に必要な全栄養素の1/3が摂取でき、しかもおいしいサワーブレッド

最近はパンを家庭で作る人も増えました。おいしいパンを作る上で、欠かせないのが微生物です。酵母はパンを膨らませるのに活躍しますし、乳酸菌はパンの香りや食感に良い影響を与えてくれます。
私のゼミでは、パンをより美味しく、付加価値の高いものにするための研究をずっと続けています。最近の主要なテーマは「サワーブレッド」をベースとした完全栄養食の開発です。サワーブレッドはドイツ、ヨーロッパやアメリカでよく食べられるライ麦や全粒粉を使ったパンで、ビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に含むなど、栄養価の高さに特徴があります。どうせなら栄養価をもっと高め、「これ1つ食べると1日に必要な栄養素の3分の1が摂取できる」といったものにしようと、学生たちと一緒に取り組んでいます。
いくら栄養が摂れる、健康にいいと言っても、食べて美味しくなければ一般に受け入れられません。味の良さにも妥協するつもりはありません。そのために、原材料をどう選択し、どう配合すればよいのか。微生物の力を最大限活用するには、加工法にどんな工夫が必要なのか。無数にあるパターンの中から選択するのは大変ですが、実現していきたいと思います。

プラズマ技術を応用した、低温・短時間の食品殺菌

食品の殺菌に関する手法やシステムの開発にも力を入れています。食品産業において、食品殺菌技術は食の安心・安全を守る基幹技術です。業界では、食品をフィルムで包装し、100℃以上の蒸気や加圧熱水で加熱するレトルト殺菌がよく知られていますし、液状食品の連続殺菌には、プレートヒーターという手法があります。しかし、それらの殺菌技術には一長一短あり、食品産業では、出来るだけ加熱を行わない非加熱殺菌技術の開発が求められています。そこで、私たちは電子情報工学科との協同で、プラズマ技術を使った殺菌手法の開発を進めています。
一般的なプラズマ殺菌とは、過酸化水素などの有毒ガスを利用し、医療器具の滅菌などに用いられています。本学の電子情報工学科には、電子基板の表面改質などを行うためのプラズマ設備がありますが、過酸化水素などの有毒ガスを使用せず処理できる装置のため、これを食品の殺菌に応用しようとスタートしました。
プラズマ殺菌の最大の特長は、低温で行える点です。殺菌に100℃以上の高温を使うと、食品に含まれる栄養素が壊れたり食品素材そのものにダメージが出たりします。しかし60℃程度の低温による短時間の加熱であれば、食品に与える影響は最小限に抑えられます。殺菌が短時間で済み、食品への影響が小さいとなると、興味を持つ食品メーカーは少なくありません。
また私は、プラズマ処理を殺菌だけにとどめるつもりはありません。殺菌とともに食品の加工処理を行うことで、キッチンにおける調理負担を減らしたり、新たな食品素材の提供につなげたりしていきたいと考えています。

プラズマ技術を利用した殺菌装置

大学の枠を超えた研究や、創薬に貢献する研究など、さまざまなテーマが進行中

この研究は、文科省の科学研究費に3期(9年)連続で採択され、研究費を受けています。それだけ研究内容が高く評価されている、ということです。
現在は、私のゼミの学生と電子情報工学科の学生が一緒になって、プラズマ殺菌の効果について、素材や条件を変えながら基礎データを積み重ねている段階です。実用化までまだまだハードルがありますが、学生たちは意欲を持って取り組んでいます。お互いに専門外の知識が必要なので簡単ではないはずですが、むしろその点が彼らの好奇心を刺激するようです。こうした協働は、工学の歴史を持つ大学に設置された食品系学科ならではのメリットと言えるでしょう。
他にも複数のプロジェクトが進行中です。大学の枠を超えた、食品メーカーとの協力による新たな機能性食品の開発にも取り組んでいますし、創薬につながる研究もあります。研究が進んでいけば、とても面白い成果が生まれそうです。
微生物を対象に、その能力を活かして新たなものを作り出したり、殺菌について考えたり、いろんな角度からアプローチしています。いずれにおいても、私たちの生活をさらに豊かに、安全にしてくれる成果を見出していきたいですね。

こちらはレトルト殺菌を行う装置。
レトルトの特徴を学びます