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食健康科学科

西村 一樹

教員紹介

西村 一樹NISHIMURA Kazuki

環境学部 食健康科学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○環境生理学
○運動生理学
○健康科学
【担当科目】
環境応答学 、 生涯スポーツ 、 スポーツ科学 、 健康とスポーツ科学 など
【研究テーマ】
1.生物学リズムと健康度の関連性に関する研究
2.特殊環境下の運動時生理応答特性に関する研究
【ひとこと】

DO THE BEST
自分自身が今現在持っている力を最大限に発揮し、物事に取り組むこと!!!もちろん、レベルアップも忘れずに。

研究紹介

西村 一樹NISHIMURA Kazuki

環境学部 食健康科学科 教授

⾼齢の⽅の⼼筋梗塞や脳梗塞は、なぜ午前中が起こりやすい︖
PROLOGUE

急に胸が締めつけられるように痛み出す『⼼筋梗塞』。激しい頭痛がして、⾔葉が上手く話せなくなったりする『脳梗塞』。共に、⾎液の流れがうまくいかなくなることで起こる、早急に治療が必要な病気です。⾼齢者に多いのですが(もちろん若い⼈もこれらの病気にかかる可能性があります)、特に午前中に発症するケースが多いと⾔われます。でも、なぜ午前中なのでしょうか?「それは午前と午後で、⼈間の⽣理指標が変化するからです」と⻄村先⽣は語ります。

体が睡眠から覚めきっていない午前の運動は、負荷が⼤きい

サーカディアンリズムという⾔葉を知っていますか。生物学リズムの一つで約24時間を1周期として変動する⽣理現象のことで、動物や植物などあらゆる⽣物が持っています。もちろん、⼈間もです。わかりやすく⾔うと、⼈間の体はいつでも同じように機能するわけではなく、時間帯によって変化する、ということです。
私とゼミの学⽣は、同じ強度の運動を午前にする場合と午後にする場合とでは、⼼拍数・⾎圧はどう変わるか、を調べました。学⽣が被験者となり、20%、60%の負荷で⾃転⾞こぎをするのです。
すると特徴的な結果が得られました。60%の負荷でこぐ時の⼼拍数・⾎圧は、午前も午後もほぼ変わりません。しかし20%の時、⼼拍数・⾎圧とも、午前の⽅が低かったのです。つまり「午後に⽐べて午前は、⼼拍数・⾎圧の最⼤と最⼩の差が⼤きくなる」わけです。午前は体がまだ睡眠から完全に覚めきっていない状態なので、差が⼤きくなるのでしょう。
また、徐々に自転車こぎ運動の負荷を高めていき、無酸素性作業閾値というエネルギーの供給系が切り替わるポイントを午前と午後で比較しました。すると午前中に無酸素性作業閾値強度が低強度で出現することを発見しました。つまり、同じ負荷で午前と午後運動しても相対的な負担度は午前中に高くなることを意味しています。
午前中に⾏動を起こすと当然、体には⼤きな負荷がかかります。脳梗塞や⼼筋梗塞など⾎液の流れに起因する病気が午前に起こりやすいのも、こうした⽣理現象による、と⾔えます。

生物学リズムを健康づくりに活かす取り組み

サーカディアンリズムを定量的に評価する方法を考案し、質問紙調査から得られた精神的健康度の良し悪しで群分けした際の体温の日内変動特性を検討しました。その結果、精神的健康度の良い群は、起床時の体温や体温の最高値が高く、1日の体温の変化が大きいことを明らかにしました。そして、精神的健康度が悪い群は体温の最高値が遅い時間に出現することも明らかにしました。
このように、時間生物学は健康科学や運動学に応用することが可能です。時差ボケを伴うような海外遠征で運動パフォーマンスを低下させないためには、サーカディアンリズムの乱れを最小限にする必要があります。
私たちは研究成果をまとめ、概日リズムに着目した健康づくり指針10箇条を公表しました。今後は、社会的時差ボケや生物学リズムの中でも1年のリズムに着目して、研究を進めたいと考えています。

学生たちが協力し、
午前と午後で同じ運動を⾏った場合の、
心拍数・血圧の数値の変化を測定。

災害避難所生活を少しでも過ごしやすくするための取り組み

毎年多くの自然災害が発生している我が国。避難所での生活は食事、トイレ、ベッドなど日常生活とは違って当たり前、少しのことでも我慢しようと考えがちです。しかし、その我慢が災害二次被害を引き起こしてしまいます。
私のゼミでは、避難所生活での睡眠環境に着目した研究を行っています(避難所で不眠を訴える人は多く、不眠がさまざまな健康被害を引き起こします)。我々が提案しているのは、ダンボールベッドや、キャンプで使用するエアーマットを災害避難所で簡易寝具として使用すること。実際に夜間睡眠中の心拍数や血圧、自律神経系調節や睡眠覚醒リズム、眠りの自己評価度を測定し、それらの簡易寝具の有効性を明らかにしました。ダンボールベッドは災害避難所が開設される場所に前もって置くか、災害発生後に搬送すればよいと思います。また各個人ができる事前準備として、家庭で用意する防災グッズの中にエアーマット(収納可能なタイプなら持ち運びやすいです)を加えておくとよいでしょう。万一の災害時でも、睡眠環境を改善することで災害の二次被害が防げます。その予防に貢献できるよう今後も研究を進めていきます。