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情報コミュニケーション学科

濱﨑 利彦

教員紹介

濱﨑 利彦HAMASAKI Toshihiko

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○アナログ-デジタル信号処理システム
○ワイヤレスセンサーネットワーク
【担当科目】
デジタルシステム設計 、 経営ストラテジ 、 情報とキャリア
【研究テーマ】
1.超低消費電力センサー情報プロセッシングシステム技術
2.近距離ワイヤレスネットワーク技術
3.高精度音響情報処理技術
【ひとこと】

“自分探し”はずっと続きます。考え込んでしまったら課題を明確にする事が大切です。

研究紹介

濱﨑 利彦HAMASAKI Toshihiko

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

海のIoT化を推進するシステムの構築で、
水産業や環境保全などに貢献
PROLOGUE

IoT化があらゆる領域で進められています。工場でも、店舗でも、家庭でも、農場でも、そして海でも。海がインターネットにつながり、その情報がリアルタイムで取得できれば、漁業や養殖業の効率的な展開や、あるいは海の環境保全などに貢献するさまざまなことがわかるようになるでしょう。しかし広大な海のIoT化は簡単ではありません。そんな難題に挑戦しているのが濱﨑先生。先生は、海で養殖を行う場合に不可欠となるクロロフィル濃度を、ITの力で収集するシステムの構築を目指して研究を続けています。

牡蠣養殖に欠かせないクロロフィルを、海のIoT化で追跡

広島の海では、牡蠣養殖が盛んです。牡蠣の生育には養分のクロロフィルが不可欠ですが、クロロフィルの分布は一定でなく、季節と気象さらに波の動きで撹拌され、絶えず変化します。そのため、牡蠣の養殖いかだはクロロフィルを求め、移動を余儀なくされています。
養殖海域におけるクロロフィルの分布をリアルタイムでつかめれば、いかだの移動はもっと効率的に行えるはず。そこで海の情報収集を容易に、しかも低コストで行えるIoT化の仕組みを考えました。
1辺30cmほどの三角形をした「クローバーブイ」の中央に加速度センサ・温度センサと画像センサ、通信デバイスを搭載します。クローバーブイを海のいくつかのポイントに浮かべ、画像センサで海面を撮影し同時に波の動きと気温を観測。データを広島工大に無線で飛ばします。取得した海面の色をスペクトル分析すると、クロロフィル濃度が推測できるのです。
これまでも種々の観測装置が開発されてきましたが、1台数十万円から数百万円と高価ですし、サイズも比較的大型で設置に手間がかかります。瀬戸内海のような多島海域をカバーするには、もっと手軽に扱えるものが必要。その点、私たちが開発したブイは1人で設置できるサイズでコストは数十分の一以下。従って、多数設置し観測ネットワークを構築できるのです。

取得した海面画像をスペクトル分析し、クロロフィル濃度分布を推測

海面画像からクロロフィル濃度を割り出すには、データの集積が欠かせません。集めたビッグデータをAIに機械学習させれば、推測精度が向上します。私は学生たちと月に1度、高速ボートで広島湾に出て、主要な養殖海域13ヶ所の基礎データを収集しています。季節や海域によってクロロフィルの分布が異なるので、調査の回数を重ねなければなりません。
分析精度を上げるため、環境学部 地球環境学科とも協力しあっています。同学科では人工衛星からの画像データを使ったリモートセンシングで、クロロフィル分布情報を取得する研究を行ってきています。衛星を用いて観測できるのは天候の影響もあり平均して月に2回程度と限られています。そこで人工衛星の“鳥の眼”と、リアルタイム観測可能なクローバーブイの“魚の眼”を併用しそれぞれのメリットを活かして、クロロフィルを追跡するわけです。
撮影した海面画像のスペクトルとクロロフィル濃度のある程度の関係性は見えてきました。しかし、波面からの反射光は一定ではなくノイズになる、などの問題があります。ノイズをうまく除去し、精度を上げれば、十分実用に耐えうる情報となりそうです。
牡蠣養殖は、広島を代表する産業ですからね。海のIoT化によって、しっかり貢献していきたいと考えています。

学生が抱えている機器がクローバーブイ。
このブイを海に浮かべ、情報を取得します。
モニターの画像は広島湾の観測海域。

「真空管」アンプの豊かな音響特性を、デジタル化できるか?

私は本学に着任する以前、オーディオ関連のシステム半導体設計に携わっていました。その経験をベースにした「高精度の音響情報処理技術」というテーマも進めています。
エレキギターを演奏する際、ペダルエフェクターやアンプを使って音を増幅したり歪ませて音色をアレンジします。言わばアンプも楽器の一部なのです。
アンプはアナログ回路が主流でしたが、半導体トランジスタ及び集積回路技術の進歩で、高効率なデジタルアンプが使われるようになってきました。とは言え、まだ完全にアナログ回路が置き換えられたわけではありません。特に真空管ギターアンプは「楽器としての独特の音響特性」から根強い人気を誇っています。そこで私たちは、真空管が生み出す音のひずみや効果を明らかにしようと研究しているのです。そのメカニズムが判明すれば、アナログアンプのより正確なモデル化も可能になるでしょう。
実際に30種類以上の真空管を揃え、そのデバイス物理特性とアンプの信号伝達特性の関係を測定してきました。結果として、モデルその特性性式を表すことが徐々にできるようになってきています。検証を重ねれば、アナログギターアンプのデジタル化をさらに進める成果となるでしょう。ひずみのような非線形な現象をモデル化する知見は、音響だけでなくさまざまな分野に応用できると思います。

真空管の音楽音響的な
歪特性を測定している様子