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情報マネジメント学科

井上 和重

教員紹介

井上 和重INOUE Kazushige

情報学部 情報マネジメント学科 准教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○包絡分析法
○経営工学
○オペレーションズリサーチ
【担当科目】
コストマネジメント 、 プロジェクトマネジメント 、 ビジネスデータサイエンス 、 技術経営
【研究テーマ】
1.包絡分析法を用いた評価手法の構築対象の強みを考慮した評価が可能な包絡分析法を用いた新たな手法の構築
2.観光事業に関する意思決定支援旅行者の目的や価値観に基づいた、観光地推薦などに関する意思決定を支援するための分析やシステムなどを開発
【ひとこと】

学生・社会人問わず、周りには色々なきっかけが転がっています。 中には、向こうから、こちらに向かってくるものもあります。そんな「些細なきっかけ」や「縁」を大事にし、学生生活では色々なことにチャレンジしてみてください。

研究紹介

井上 和重INOUE Kazushige

情報学部 情報マネジメント学科 准教授

「数学は得意」「英語だったら負けない」という個性を、
適切に評価するには?
PROLOGUE

「私、英語は得意なんだけど数学がちょっとね…」とか「理系科目の点数は良いけど、文系科目が今一つ…」ということは誰にでもありますよね。全科目でバランスよく高得点を挙げられるなら問題はないけれど、実際は苦手科目があって、点数が伸び悩んでしまったり。こうした総合や平均だけの評価だと、「この科目は誰にも負けない」といった個性を見落としてしまいかねません。総合や平均に加え、それぞれの個性も評価できる手法はないか、と研究しているのが井上先生です。

人や企業が持つさまざまな特徴を、効率性という尺度で多面的に評価する

大学入試などでは、試験科目の合計点で合格・不合格を判定されるのが一般的です。しかし総合による評価は、何でもそつなくこなすオールラウンダーが上位に来がちで、「英語だけ飛び抜けている」とか「数学だけは極めて優秀」といった個性的な人をうまくすくい上げることができません。
これは企業経営を判断する場合も同様です。同じコストをかけた場合、製品Aは利益が低いけどたくさん売れている。製品Cは逆に販売数は少ないけれど、利益は抜群に高い。製品Bは利益もまあまあ、販売数もまあまあ。こういう結果だったら、企業はどの製品を重視すべきでしょうか。また、その企業が新たに製品Dの販売を始めたとき、目標とすべきはどのポジションか…など。各製品の売上合計だけをみても、企業の強みは見えません。
人でも企業でも、それぞれの能力は多様な要素で構成されています。それらを「効率性」という尺度で測り、多面的に評価しようというのが、私の研究する包絡分析法(DEA)です。
何らかの意思決定を行う場合の根拠となる評価手法について研究する学問分野をオペレーションズ・リサーチと呼びますが、包絡分析法もその中の一つです。

包絡分析法を用いると、
従来型の手法では見えない
個性が抽出できます

包絡分析法(DEA)はアスリートの評価にも有効

ある企業で、製品を造るのにかかったコストを入力項目x、製品が売れた個数を出力項目y1、得られた利益額を出力項目y2とします。そしてy1とy2を、それぞれxで割ります。得られた数値が効率性です。この効率性を製品別に割り出し、一つのグラフにプロットしていくと、複数の製品を相対的に比較して評価できます。一般的な評価方法では埋もれてしまいがちな特徴を、うまく抽出できるようになるわけです。
プロアスリートの能力判定にも、DEAを用いるケースがあります。例えば野球選手の打席数を入力項目、安打、本塁打、打点、盗塁などを出力項目として効率性を算出し、グラフ化してみます。すると選手の個性や能力が、多面的にわかってきます。
チームの主力選手のグラフと、若手選手のグラフを比較すると、若手の伸びていくべき方向性を見出せるかもしれません。まず主力選手数名の効率性をプロットし、それぞれの選手の点を線で結びます。この線のことを「効率的フロンティア」と呼びます。次に若手選手の効率性をプロットし、若手の点の延長線が効率的フロンティアのどこで交わるか、を見るのです。その交わった箇所が、若手選手の目指すべき方向と言えます。

DEAのモデル。コストを入力項目、
利益と販売個数を出力項目とし、
製品A、B、Cの効率性を割り出します。
この各点を結んだ線が
「効率的フロンティア」です。
新製品Dの延長線が
効率的フロンティアの
どこで交わるかによって、
製品Dの方向性が見えてきます

SDGsや脱炭素など、評価の難しい要素にこそ、DEAが対応する

企業経営に置き換えても同様で、既存製品が形成する効率的フロンティアから、新製品の可能性を探ることもできます。あるいは先行する同業他社の効率的フロンティアをベンチマークに、自社の進む方向を見定めることにも役立つでしょう。
昨今ではSDGs関連や、脱炭素関連など、取り扱いが単純でない要素も増えてきました。これらを評価するのに、包絡分析法は一つの解決策になり得ると考えています。
災害に対する評価手法としてもうまくいく可能性があります。限られた防災予算を、どの災害を対象に配分すれば良いのか。これも総合や平均で割り出すのは困難です。多様性のある状況を評価したいケースで、DEAは力を発揮します。
ただし、DEAだけで評価の問題が全て解決するわけではありません。入力・出力の各項目を吟味しなければ、DEAは適切な分析ができません。総合や平均といった評価手法も使いながら、DEAによって個性を拾い出すなど、さまざまな評価手法を補完的に併用することで、より納得度の高い評価ができるようになるでしょう。
複雑な事象を判断するための一助となるような、DEAに関するいろんなモデルを提示していきたいと思います。