情報マネジメント学科
岩井 健吾
教員紹介

プロフィール
- 【専門分野】
- ○学習工学(情報技術を活用して人の学びを支援する)
- 【担当科目】
- プログラミング基礎A/B 、 数理・データサイエンス・AI入門 、 認知科学特論
- 【研究テーマ】
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1.オープン情報構造指向アプローチに基づく再構成型学習の拡張に関する研究
2.試行錯誤型課題の妥当性の評価に関する研究
3.算数文章題を対象としたリメディアル/リスキリング教育に関する研究
- 【ひとこと】
スモールステップで1歩ずつあせらず着実に成長していきましょう。
1つ1つは小さな成長でも4年間の積み重ねで大きな成長となります。
研究紹介
岩井 健吾IWAI Kengo
情報学部 情報マネジメント学科 助教
生成AIを正しく、適切に使いこなすため必要不可欠のスキルとは?
PROLOGUE
生成AIって、とても便利ですよね。何かを調べようと生成AIに問いかけると、詳細な答えを返してくれます。宿題を解くのに困って、生成AIに助けてもらっている…なんて人もいるのでは。しかし、この生成AIをみんな適切に使いこなしているかと言うと、決してそうではありません。生成AIが作り出した正しくない情報をうのみにしてしまったり、生成AIに頼りすぎて、結局、自分自身の知識として身についていなかったり。そこで、生成AIを使いこなすためのスキルについて研究しているのが、岩井先生です。
AIと専門家に質問した場合、答えの導き出し方がまるで異なる
例えば、風邪を引いた時、生成AIに「風邪に効く薬は?」と問いかけると、いくつかの風邪薬を勧めてくれるでしょう。情報通りの薬を服用すれば、風邪症状は収まるかもしれませんが、まるで効かないこともあるはずです。
次に薬局に出かけ、薬剤師に同じ質問をしてみます。すると薬剤師は「どんな症状ですか?」と尋ねてきます。熱か、のどの痛みか、鼻水か、いつ頃からで、どの程度の苦しさか。それらの情報を伝えることで薬剤師は「だったらこの薬は」と勧めてくれます
薬剤師に聞いても生成AIに聞いても同じ答えなら、両者は同じと感じるかもしれません。しかし、両者が答えにたどりつく筋道はまるで違います。生成AIは、質問を統計学的に解析し、ある言葉の次に来る確率の高い言葉を選び、文法的に破綻のない文章を組み立てます。しかし薬剤師は、「薬」に含まれる「成分」、その「効能・働き」などを、体系づけた知識がベースにあります。患者の症状を聞かないと薬が選択できない、と薬剤師はわかっているわけです。
もちろん生成AIも、あらかじめ症状や成分を指定して質問すると、薬剤師と同じ答えを返してくれると思います。しかし、体系付けられた知識が頭の中になければ、生成AIの答えが正しいかどうか判断もできないし、その情報が自分の知識として定着する可能性も低くなります。
「情報」はパーツに分割し、意味を考えて再構成することで「知識」になる
生成AIの答えが正しいかどうかを判断するためには、体系化された知識を獲得する必要があります。では、体系化された知識を獲得するためにはどうすればいいでしょうか?
私は、その答えの一つが再構成学習であると考えています。与えられた「情報」は、目にしただけでは単なる文字の羅列に過ぎません。その一方で、情報を分解し、各パーツの意味を考え、自分の中で再構成した時、初めて「知識」として定着します。つまり、与えられたパーツを組み立てることで体系化された知識となります。このような方法を再構成学習と呼んでいます。しかし、この時に注意しなければならないことは、自分でいきなりパーツを用意するとなかなか上手くいかないことが多いのです。実は適切なパーツを用意することは非常に難しく、そこで私は知識工学を活用して適切なパーツを用意するという研究をしています。この仕組みで再構成させることで学習を促進することができます。
体系化された知識を獲得した後であれば、生成AIが与えてくれた情報に対しても、同じように情報の分解(分節化)、分節ごとの意味づけ、再構成という手順を踏めば、情報を自分の知識と対応付けて理解できます。再構成がうまくいかなければ、それは生成AIの答えが適切でないのかもしれません。つまり、意味の再構成により、生成AIが時々やってしまう正しくない情報を見抜くこともできるのです。この意味の再構成は,生成AIを正しく利用するスキルを育むのに重要な役割を果たすでしょう。
算数文章題、プログラミング学習など様々な分野を対象に再構成型学習を研究
私はもともと、算数の文章題を素材とした再構成型学習に取り組んでいました。2+3=5と教えるのではなく、「りんごは3個」「みかんは2個」「全部で5個」などいくつかの文章パーツを用意し、「答えが5になる問題を考えてみよう」と問うのです。すると小学生たちは、文章パーツを取捨選択し、5になるように自分なりに組み立てます。このように再構成型学習は、数学でも社会でも、あるいは産業の分野でも、対象を変えるといくらでも応用ができます。
別のテーマとしては、プログラミング学習に関わる研究もあります。プログラムのソースコードを題材とするもので、ソースコードをただ見る場合と、コードの一部を空白にした場合と、正しいコードを再構成させる、という3つの場合を想定した時、学習者はどの場合でどういう風に経験が変わるのか、評価しようというものです。これはラーニングエクスペリエンスと呼ばれる研究で、どういう学習体験が、学習者にどんな効果をもたらすのか、という点に主眼を置いています。
算数文章題、プログラミング学習などテーマはいろいろありまずが、どれも再構成学習を基盤としています。この研究を深めることで、AIとうまく付き合うスキルを育んでいきたいと思います。