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情報コミュニケーション学科

林 孝典

教員紹介

林 孝典HAYASHI Takanori

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○通信ネットワーク工学(メディア品質評価、ネットワーク品質測定、コミュニケーションクオリティ、心理学的測定、デジタル信号処理 ほか)
【担当科目】
情報コミュニケーション概論 、 Webデザイン 、 認知科学 、 行動科学 、 コミュニケーションシステムデザイン 、 デジタルシステム設計実践 、 情報システム特論 ほか
【研究テーマ】
1.音声/映像通信サービスを対象としたユーザ体感品質評価法の研究
2.生体情報を活用した情報通信サービスのユーザビリティ評価法の研究
3.臨場感・疲労感等の高次の感覚に対する感性評価法の研究
4.各種メディアに対する人間の知覚・認知特性に基づいた通信サービス設計・制御法の研究
5.ノンバーバルコミュニケーションやユーザの通信行動理解に関する研究
【ひとこと】

現代社会で強く求められている、"とことん考え、きちんと伝える"力を、勉学や専門研究を通して、楽しみながら身に付けてほしいと考えています。

研究紹介

林 孝典HAYASHI Takanori

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

ネット経由で動画を⾒る際の
「また切れた!」というイライラを解消するには?
PROLOGUE

スマートフォンで動画サイトにアクセスし、好みの映像を⾒て楽しむ⼈も多いでしょう。でも、⾒ようとしてもグルグルマークが回って…という経験はありませんか? ようやく始まったと思ったらブチッ、ブチッと切れたり。楽しむどころか、イライラとストレスが溜まるばかり。
こうした問題を解消し、ネットワーク経由の様々な通信サービスを、ユーザが快適に利⽤できるようにしたい、と考えているのが林先⽣。サービスやネットワークの品質を最適に整えるための設計・制御について研究しています。

イライラ感には、様々な要因が影響を与えている。

Web上の通信相⼿の⾳声がブツブツ途切れる、動画の再⽣が何度も⽌まる…。こうしたイライラの要因は、多岐にわたります。
動画を例に考えてみましょう。ここには⼤きく分けて3種類の⼈々が関わります。1つは動画を作成してネットに送るサービス事業者。2番目に動画を転送するネットワーク事業者。最後の1つが、動画を楽しむユーザです。この3者のそれぞれに、イライラの要因が存在しているのです。
データ容量の⼤きい動画をネットワークに送るには圧縮(符号化)が⽋かせませんが、圧縮しすぎると動画がボケたり、ノイズが現れます。またネットワークは動画データを連続して転送しますが、多くのユーザが同時にネットワークを利⽤すると、⾔わば交通渋滞が発⽣し、データがユーザまできちんと届かなくなります。そして、ユーザの端末の性能や画⾯サイズによって、動画をきれいに再⽣できないことがあります。
サービス・ネットワーク・ユーザの状況が重なり合い、動画品質が決まります。動画や通信の品質を向上させるには、それぞれを⾒据えた上で最適なあり⽅を考えなければいけません。

ヘッドマウントディスプレイを装着し、
VR動画を見ながら、
画質や臨場感の評価を行っています。

「ユーザ体感品質」を出発点に、ネットワークやサービスを⾒直す。

きれいだけど細切れになる動画と、多少画質は粗くなっても最後まで⽌まらない動画。おそらく後者の⽅が、満⾜度は⾼まるはずです。
通信サービスの品質を判断するのはユーザです。ユーザの体感する品質(QoE=Quality of Experience)に何が影響を与えるのか。各⽅⾯に存在する要因の度合いの変化が、QoEにどんな違いとなって表れるのか。それらを定量的に検討し、QoE向上につなげるのが私の研究です。
現在では、ユーザ端末内の動画再⽣アプリが動画受信量の低下を検知すると「このままだと切れる」という信号を出したりします。信号を受けたネットワークは通信を途切れさせないよう、⾃動で動画の画質を落として容量を軽くするのです。「切れない」ことはQoEにとって重要度の⾼い要因なので、こうした仕組みを備えてQoE向上に役⽴てます。
ですが、まだ未整備な部分が多々あります。サービスやネットワークなど各段階の品質がQoEとどう関連するのかモデル化できれば、ネットワーク制御やアプリ設計もより良くなるでしょう。

オンライン会議・イベントの活発化で、QoEの重要性はどんどん高まる。

私の研究は、ある⾯で⼼理学的な要素も含んでいます。QoEが重視するのは、"快適さ"という⼈の⼼の動きだからです。被験者にいろいろな⾳や映像を体験してもらい、⼼理状態を測定するといったことも必要。⼈間の感覚をモデル化し、認知特性を解明することが出発点になります。
センサを活⽤し、ユーザの⽣体反応や通信⾏動をモニタして分析する研究も始めています。通信の様々な状況に⼈間がどう反応するか、どんな場合に通信を⽌めてしまうのか。心拍や脳波などの⽣体情報や、顔の表情の動きに現れる感情の分析が、QoE向上に貢献するでしょう。
昨今、テレワーク普及によるオンライン会議・授業などの機会も増えてきました。エンターテインメントでもイベント生配信が活発化しています。しかし、せっかくリアルな映像が送られても、臨場感がユーザに伝わらなければ、魅力半減です。
画質向上や遅延回避は言うまでもなく、配信主催者と参加者の視線一致であったり、VR・ARを活用した場作りといった工夫は欠かせません。さらに会議などで、AIによる議事進行や情報提示、議事録作成などの代行も可能となっていくでしょう。そうなれば参加者は、より会議に集中でき、コミュニケーションが活発化します。これらの状況を考えても、QoEの重要度は増していくでしょう。

品質評価専用の実験室内で学生がオンライン会議を体験。映像や音声はしっかりつながっているか、どういう環境がQoEの低下につながるか、様々な条件を設定して評価します。